研究課題/領域番号 |
18K12476
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
大山 万容 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (40773685)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 複言語教育 / 言語への目覚め活動 / 小学校英語教育 / 少数派言語教育 / CLIL |
研究実績の概要 |
本研究では「言語への目覚め活動」について、1)海外で出版されている教材を翻訳し、それを元に日本の文脈に合わせた要素を埋め込み、日本で利用可能な教材を作成する。2)言語への目覚め活動をカリキュラムに組み込んでいる地域における教員研修を調査し、教員への研修方法と工夫について知見を得る。3)1.で作成した教材および2.の研修の知見を元に、幼児教育・初等教育における外国語教員養成の授業で実践し、アクション・リサーチを行う。という計画で進めている。本年度は、 1)日本での言語への目覚め活動の教材開発に関して、昨年度より継続して奈良市内の小学校教員の協力を得た他、さらに6月にタイ、7月に北海道で行った学会発表での出会いをきっかけに、大阪市と横須賀市の現職小学校教諭の協力を得ることができ、年間を通して直接またはオンラインで複数回の教材開発会議を行い、さらなる教材を開発した。2月には京都に滞在している外国人研究者(Daniele Moore)とともに奈良市、大阪市内の小学校で実践参与観察を行い、教諭を含む国際共同研究へとつなげることができた。2)海外での言語への目覚め活動の教員養成に関して、10月のフランス出張において研究者と交流し、教員養成資料を収集した。加えて、"Translanguaging" 教育に関する議論について知的交流を行うことができ、複言語教育の意義についての知見を深め、次の研究課題を明確化できた。さらにドイツで母語教育を行う教育研究者との知己を得て、バイリンガリズムの知見を活かした少数派言語教育における複言語教育について、研究協力関係を築くことができた。3)日本での言語への目覚め活動の教員養成に関しては、前年度より今年度にかけて行われた実践でアクション・リサーチを行ったほか、1.の共同研究を元に、現職教諭のための教員養成について知見を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)については、複数の教材を開発し、複数の教諭による実践を得たうえで、その経過を学会(JES、International Language Management Symposium)発表したほか、論文投稿を行った。また、昨年度のフランスでの研修で得た教材開発の知見をもとに、翻訳教材にたよらず、現在使用している教材から発展させて複言語教材の作成も行った。これらは来年度以降に国内外の学会で論文として発表する予定である(HICE Conference Hawai 2021)。また年少者言語教育と複言語教育の関連については、10月にドイツで講演を行ったほか、昨年度の国際研究集会に受けて書籍の編集・執筆を行っている(仮題『多言語化する学校』)。日本での出版ののちに、フランスでの翻訳出版も計画し、フランスでの研究者らと協議を進めている。このように予定してよりも多くの出張を行い、研究成果を出すことができた一方、ウェブ構築については未着手である。2)について、トランスランゲージングを複言語教育の中から捉えなおす視点について、国内・国外両方の観点からより明確化することができ、成果は学会発表(MHB)の他、現在執筆中の論文が(Mooreらと共著)2020年度に出版される予定である。3)について、10月にドイツで少数者言語教育を行う教員らとの研修を行い、また12月には大阪市内の公立小学校で行われた教員研修会に招かれ、言語への目覚め活動の教育的意義についての研修を行った。また、そのうち一人について追跡調査を行った。このようにして国内における教員養成の知見を集めつつある。 なお2020年3月には複言語教育に関する国際研究集会を、また2020年9月には台湾大学で開催されるシンポジウムに招聘され、準備を進めきたたが、新型コロナウイルスの影響でいずれも非開催となった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの影響により、2020年度は当初の研究計画から適宜変更を行いつつ研究を推進する予定である。 1)について、ウェブに載せるコンテンツはそろっているため、本年度中にウェブサイトの構築を行う。研究発表の場として、国内の学会発表として、国内では8月にMHB学会、10月にJES学会、3月にJACTFLでの発表を予定しているが、いずれも延期の可能性がある。また、2020年度中に3つの国際学会、第32回国際心理学大会と、第3回国際社会心理学大会、HICE Conference Hawai 2021での発表がいずれも承認されたが、これらも2021年度に延期が決定したか、そうなる可能性が高い。2)について、これまでの海外調査資料の整理(とりわけ、フランスでの教員養成資料の翻訳と日本語での資料作成)と報告を行う他、オンラインでの教員養成キットについて、海外での先行事例(CARAP、ECML)の調査を進める。3)について、教員養成の実践をさらに行う必要があるが、やはり実際に会場に人々を参集させる形での開催が困難であることから、オンラインによる研修会を構想する。 以上のように、やむを得ない理由からいずれも本年度中に終了しない可能性が高く、その場合は来年度に引き続き、1)-3)を達成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「次年度使用額」に残額352,534円が生じた理由は、ウェブ構築にかかる手数料が全く生じていないことにより25万円、さらに2019年度末に予定されていた国際研究集会の共催者として、支出する予定であった必要経費(約10万円)が、新型コロナウイルスの影響により開催延期となったために、残金となった。 (使用計画) 本年度のウェブ構築費用として用いる他、2019年度に予定されていた国際研究集会が首尾よく2020年度中に開催されることになれば、その費用として充当する。
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