明治新政府では「民権」の保護と活用を強く意識し、そのための議論を展開していた。政府官員たちは、人民の抱える諸問題を解消し、公平な社会、ゆたかな生活を保障する「新政」を謳ったが、それを実現するためには広く人民の協力と自発的な活動を引き出すことが不可欠であった。この「新政」の困難ゆえに、政府官員たちは、人民の「民権」を改革法制に組み込み、議会による議論・調整を期待しつつ、人民の「民権」の自主的行使による明治維新を展望した。それは本然的な「民権」擁護というよりも、明治維新の現実的展開という課題と結びつけられた「民権」論であったといえる。
|