研究課題
若手研究
本研究は、初期近世西地中海地域のムスリムとキリスト教徒の境域における政治・外交的関係の形成と、それが地域の部族社会に及ぼした影響を、特にモロッコ地域北西部に焦点を当て、明らかにした。キリスト教徒の君主との外交関係は、ムスリムの政体の正当性と大きくかかわる問題であったため、その変化はしばしばムスリム同士の政治的関係に波及したこと、そして、政治的に敵対するキリスト教徒の存在が、ムスリム宗教知識人の危機意識を喚起し、境域とその周辺地域における部族社会の習俗改良運動をもたらしたことを明らかにした。
歴史学
本研究により、初期近世モロッコ地域北西部の境域化は、地域社会の在り方に重大な変化をもたらしたことが明らかになった。第一に、境域とその周辺に住む「腕っぷし」の強い人々に、異教徒に対するジハードの指導者として政治的に台頭する機会を提供し、国政に参加することさえ可能にしたこと。そして、異教徒による征服をムスリム社会の堕落の結果と捉えた人々による改良運動の結果、部族社会のイスラーム化が進展したことである。