研究課題/領域番号 |
18K12531
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
池尻 陽子 関西大学, 文学部, 准教授 (50795044)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 青海チベット仏教寺院 / 明・清 / クンブム僧院 |
研究実績の概要 |
2018年度は、明・清両王朝及び南モンゴル諸部と青海寺院の政治・宗教両面における関係を中心に現地調査及び文献史料の検討を行った。2018年8月下旬、青海師範大学のソナム・トゥンドゥプ教授の協力のもと、青海チベット仏教寺院の現地調査を実施した。クンブム僧院(中国名:塔爾寺)境内にある高僧の邸宅(ガルワ)の調査を行った他、互助県のグンルン僧院や民和県の弘化寺などで碑文等の文物の残存状況を調査した。その調査成果の一部を2018年11月16日駒澤大学にて行われたチベット学情報交換会にて報告した(「2018 年夏 青海寺院調査報告」)ほか、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所発行の『チベット文学と映画制作の現在 SERNYA (セルニャ)』6号に寄稿した(「高僧たちの住まい:クンブム寺のガルワについて」)。 満文・蔵文史料を用いた研究成果として、2018年6月16日~17日に中国人民大学(中国北京市)にて開催された首届藏学交流工作坊(第1回チベット学交流ワークショップ)において、清朝が京師駐在のチベット僧をジューンガル征討後のイリ地方に派遣していた事例に関する報告(「関于乾隆時期清朝派遣駐京喇嘛到伊犁政策的探討」)を行った。同ワークショップには、人民大学の教授陣を始め、拉薩の西蔵大学や西蔵档案館、北京故宮博物院などからも研究者が集い、非常に貴重な情報交換の場となった。 その他、本研究課題に関わる成果報告としては、関西大学東西学術研究所・宗教儀礼研究班の例会(2018年12月14日)において、清代京師のチベット仏教施設において、チベット仏教僧が帝后喪事の際に行った儀礼に関する報告(「清廷におけるチベット仏教儀礼について:帝后喪事を中心に」)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、年度途中から「若手研究における独立基盤形成支援」を受給することが決まったため、現地調査や文献史料購入を当初の予定以上に行うことができた。青海地方における現地調査を、現地研究者の協力のもとで効率的に実施できた他、成果報告・情報交換の機会も複数回得ることができた。また、西蔵档案館所蔵の貴重なチベット語文献を収録する『清代西蔵地方档案文献選編』(2017年刊行)を始め、近年刊行の大型影印史料集を入手することができた。これら史料の購入と解析は次年度以降も引き続き行っていく。2018年度は論文としての成果発表には至らなかったが、2019年度以降順次発表する予定がある。 以上より、本研究課題は順調に進展していると判断するものである。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度以降も、①文献史料の博捜と内容の精査、②現地協力者と連携しての効率的な現地調査、③国内外での積極的な成果発信を行っていく。 ①文献史料の博捜と内容の精査:「若手研究における独立基盤形成支援」を有効に活用して、引き続き大型史料集を含む文献史料を収集していく。内容の精査に当たっては、必要に応じてチベット語・モンゴル語を母語とする研究者を招いての研究会などを実施して、能率的な研究推進に努める。 ②現地協力者と連携しての効率的な現地調査:北京や台北の文書館、及び青海・南モンゴル地方での現地調査を実施する。その際、現地研究者と連携し、効率的な調査を行う。 ③国内外での積極的な成果発信:2019年度は、7月に国際チベット学会への参加を予定しているほか、国内外での研究会・国際ワークショップにも参加予定である。また、論文としての成果発表も複数予定しており、遅滞なく進めるよう努めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中に交付が決定し受給した「若手研究における独立基盤形成支援」において、当初購入を希望していた物品(大型影印史料集)が入手できないケースや、刊行済みと公表されているにも関わらず実際は未刊であるケースなどがあったが、年度途中で他の史料集購入を検討するに十分な時間がなかった。次年度に繰り越し使用することで、より必要性の高い史料購入を検討・実施したい。
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