研究課題
若手研究
本研究は、ミャンマー・シャン州からタイ都市部の仏教寺院へ流入する「難民」の生活実践に焦点を当てて、現代社会における宗教-世俗の境界が編成される過程を民族誌的に解明した。シャン「難民」-在家者であれ、出家者であれ-は寺院という物理的な空間に居住することで、個々の生存上のニーズを充足するために多様なアクターとの結びつきながら実践を展開するとともに、その実践を規定する法や規範をつくりかえながら宗教-世俗の境界を編成している。
文化人類学
本研究の学術的意義は、宗教研究の主要な課題の一つであった、近現代の社会変動のなかで宗教-世俗の関係を把握し、分析するための視点と方法として、民族誌的アプローチの有効性を提示できたことにある。また、本研究の社会的意義は、通時的にも共時的にも人間社会に普遍的にみられる、宗教空間の庇護性の持続・変容のメカニズムを解明したことにある。これらの意義は、今後、1)隣接する分野との対話の可能性を拓き、2)宗教と社会のより良いあり方を探求することに役立つと考えられる。