研究課題/領域番号 |
18K12626
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宮村 教平 大阪大学, 法学研究科, 招へい研究員 (40802864)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 違憲審査基準論 / 立法事実論 / 判断過程統制 |
研究実績の概要 |
本研究は、「法律」および行政立法と呼ばれる「法規命令」と「行政規則」の制定過程に対する司法的統制の在り方の探求を研究課題とする。初年度にあたる平成30年度は、行政・立法裁量に対する判断過程統制に関する日本の判例・学説に関連する文献を収集し、精読すること、さらには次年度以降に予定されているドイツ公法学に関する研究遂行のための体制を整えることを中心的な作業として行い、研究の方向性を定めた。 そこでまず着手されたのは、わが国の憲法学で発展した違憲審査基準論と判断過程統制の相違を明らかにすることであった。違憲審査基準論という思考枠組みの思想的な源泉を辿ることを試みた結果、当該基準論は、アメリカ公法学におけるリーガル・プロセス学派のアプローチに着想を得たものであることが確認された。これは、法問題と事実問題を峻別し、事実認定という作業における《法形成を支える事実(legislative facts)》と《法適用のためになされる事実(adjudicative facts)》の区別を最大の特徴とし、基本的には、前者の認定は立法府の役割であり後者の認定は司法府・行政機関の役割だとする。このような区別がもつ本来の狙いは、拡張傾向にあった司法府の権限を抑制するという点にあったが、わが国においては、ある種の実体的な価値秩序論と組み合わされることにより、違憲審査基準論に結実したという経緯が確認された。以上の成果は研究会で報告され、日本やドイツにおける議論における位置づけ等について貴重なコメントを得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究の初年度にあたるため、まずは研究体制を整え、研究全体の方向性を考える必要性に直面したため、当初予定に比べると、他の研究者へのヒアリング等の機会を持つよりも文献の収集等に時間と費用を要した。それゆえ、本年度で遂行された研究成果を公表する段階にまでは十分に至っていない部分が多く残されているが、全体的に見れば想定の範囲内であるため、おおむね順調と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は積み残された課題として、わが国における行政裁量の判断過程統制にかかる議論状況の分析をさらに進めると同時に、ドイツ公法学での議論状況の把握に努める。次年度中にはドイツへと渡航し、現地の研究者から研究課題にかかる近時の動向についてヒアリング調査を実施し、研究の推進に役立てる。
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