フランスの2016・2017年労働法改革の射程は他の先進諸国にまで及ばないという見方もできないわけではない。しかし、国が労使関係にパターナリスティックに規制をかける範囲と、労使が自主的に規範制定をする範囲をいかに確定するかはどの国にも共通する普遍的課題であること、また生産性向上を是とする労働法改正の流れは先進諸国に共通する特徴でもあることをふまえると、日本法として参照する価値が十分ある。とくにフランスが法律よりも労使合意を優先するという選択をした背景に生産性向上という経済論理を全面に押し出していた点は重要であり、法形式の変化に着目するよりも法目的の妥当性を十分検討すべきであるという示唆をえた。
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