刑法39条に定められる心神喪失(責任無能力)・心神耗弱(限定責任能力)、特に後者について、フランスにおける責任能力制度からは以下のことが明らかとなった。 第一に、限定責任能力の規定があることによって、被疑者・被告人の主体性が保障される。単なる量刑事情ではなく、拘束力の強い法律上の減軽事由であることにより、裁判所は限定責任能力の主張を慎重に吟味するようになる。 第二に、精神障害をもつ被疑者・被告人が刑事裁判において主体的な地位を果たすためには、法律上あるいは裁判上の手当てが必要である。たとえば、刑事精神鑑定を実施し、これを十分に尊重すること、精神科医等の専門家の関与を積極的に認めることである。
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