研究課題/領域番号 |
18K12663
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
三明 翔 琉球大学, 法務研究科, 准教授 (60635176)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 証拠開示 / 刑事訴訟法 / 当事者主義 / 検察官 / アメリカ合衆国 |
研究実績の概要 |
本研究は、アメリカ合衆国の諸法域(連邦・州)の証拠開示等の法制の比較を通じて、①証拠開示の遺漏なき実効的な実施のための方策や運用、及び、②検察官による証拠開示と当事者主義の関係の理解等に関して示唆を得ようとするものである。 本年度は、昨年度新型コロナ・ウィルス感染症の拡大の影響で開催中止となった刑法学会大会が開催され、昨年度行う予定であったワークショップでの報告をすることができた。アメリカ合衆国では、検察官は、被告人に有利で重要な一定の証拠の開示に関してデュー・プロセス上の開示義務を負っているが(Brady法理)、報告では、Brady法理に基づく証拠開示の実効性には疑いがあると考えられてきたこと、その疑念を深める統計や事象があらわれていること、そして諸法域・諸機関では近年Brady法理に基づく開示の担保を狙いとした取組みが行われていることについて紹介・分析した。諸法域・諸機関の近年の取組みとしては、具体的には、アメリカ法曹協会の2009年声明(同協会が各法域で倫理規則としての採用を期して公表しているモデル・ルールにおける検察官の開示義務に関する解釈を示した。)、ノース・キャロライナ州等の一部の州での全面的な証拠開示立法の動向、そして2020年10月の連邦議会によるデュー・プロセス保護法制定を取り扱った。デュー・プロセス保護法は、裁判官が、刑事手続の初期に、検察官と弁護人に対し、Brady法理に基づく検察官の開示義務を確認させる命令と、命令に違反した場合に生じうる法的効果を確認する命令を発することを求めるものであり、手続のかなり早い段階からBrady法理に基づく検察官の開示義務を当事者に意識させ、開示漏れや開示の遅れを防ぐことを趣旨とするものと考えられた。報告ではさらに同法を受けて今後生じうる問題についても検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は新型コロナ・ウィルス感染症の影響から中止され、行うことのできなかった刑法学会でのワークショップ報告をすることができた。しかしながら、2020年の連邦法成立を受けて実施したかった補充的な海外調査は、新型コロナ・ウィルス感染症の影響が続いたため、実施することができず、またそれに伴い、論文という形での業績を発表できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
検察官の証拠開示の遺漏なき実効的な実施のための方策や運用という点では、2020年10月に成立したアメリカ合衆国のデュー・プロセス保護法が注目されるところであり、その後の運用の実態について調査するため、海外調査を実施したい。もっとも2022年度も新型コロナ・ウィルス感染症の影響は続くものと予想され、海外調査の実施が難しい場合は、インターネット上に公開されている公文書や、文献調査、オンラインでのインタビュー等に基づき、最新の運用の実態を調査し、論文として発表したい。新型コロナ・ウィルス感染症の影響から二度の延長を経た本研究であるが2022年度で終了を予定しており、これまでの研究成果を論文として研究成果をまとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ・ウィルス感染症拡大の影響から、予定していた海外調査等ができなったため、旅費予算に大きな余剰が生じた。また同様の理由から本務校の研究費にも余裕があったため、書籍・物品等の購入をそちらでまかなうことができたことも、本年度の使用額を押し下げる原因となった。次年度は感染状況を考慮しつつ海外調査を行い、それが難しい場合は、図書・資料等の購入やオンラインでのインタビュー等を実施することに予算を使用する計画である。また初年度にパソコンを予算購入して4年目に入るため、必要に応じてパソコンやその周辺機器も追加購入することも計画している。
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