本研究では,国民皆保険成立とほぼ同時期に行われた市町村民税所得割の課税方式統一と標準税率導入という減税政策に着目し,計量分析手法を用いて,地方税制の制度変更がどのような効果を持っていたのかを明らかにした。 分析の結果,市町村民税所得割の課税方式の統一は,国民健康保険料収納率に対して正の影響を与えていたことが明らかになった。課税方式の統一という減税によって住民の可処分所得が増加し,保険料を納めることができるようになり,収納率が上昇したものと考えられる。このことは,市町村民税所得割の負担の地域間格差を是正するための減税政策が国民皆保険の実現にも寄与したことを示しているといえる。
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