本研究の目的は,ケアを担う人が賃金やその他の生活面に被るペナルティを明らかにし,「ケアペナルティ研究」として発展させることである.今年度は研究を中断する予定であったため,主に文献調査を行い研究再開に備えた.文献調査は,「母親のキャリア継続」と「女性・母親差別」に関するものを中心に行った.また関連研究として,「NFRJ18(第4回全国家族調査)」データを用い,きょうだい構成の違いによって介護負担に差が生じるのかを検討した結果をとりまとめた.この分析では1)一人っ子はきょうだいがいる人にくらべて親の介護者になりやすい,2)親の介護者へのなりやすさにきょうだい順位による違いはほぼないことが示されている.また,親の介護における親-娘関係に着目した分析から,3)女性のなかでは一人っ子もしくは男きょうだいしかいない女性が親の介護を担いやすい,4)一人っ子または男きょうだいがいる長女は,きょうだいがいる長男よりも親の介護を担いやすいことも明らかになった.これらの知見は,きょうだいの有無によって介護負担の差が大きいこと,きょうだい内では親-娘関係を重視した介護役割の配分が行われていることを示している.以上の結果から,ケアペナルティの生じやすさや程度も,きょうだい構成によって異なると予想される. 次年度は研究を再開し,2つ目のサーベイ実験であるリスト実験を実施する予定である.並行して2020年度に行ったサーベイ実験データの詳細な分析も行ない,雇用者による母親/介護者に対する差別を検証する.
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