研究課題/領域番号 |
18K13062
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研究機関 | 東北女子大学 |
研究代表者 |
本山 敬祐 東北女子大学, 家政学部, 講師 (50737640)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 不登校 / フリースクール等 / 運営費補助事業 / 日本国憲法89条 / 公の支配 |
研究実績の概要 |
今年度は不登校児童生徒の支援を行うフリースクール等に対する運営費補助事業を実施している自治体の事例調査に注力した。全都道府県・政令市・特別区における当初予算事業の説明資料や教育委員会による「点検・評価報告書」等をもとに調査対象となる自治体を抽出した結果、福岡県、鳥取県、札幌市がフリースクール等に対する運営費補助事業を実施していることが判明した。本調査では各自治体における補助要綱の比較をはじめ、当該事業に関する公文書および担当職員ならびに一部のフリースクール等の指導員に対する聞き取り調査の結果をもとに3自治体の比較を行った。 2007年度に福岡県が指導員の人件費を含むフリースクール等の運営費補助事業を開始したのを嚆矢として札幌市(2012年度)、鳥取県(2014年度)が続いて導入した。札幌市および鳥取県が補助要綱を策定する際に福岡県の補助要綱が参照されたのが確認されたが、審査基準や補助対象費目の算定基準は各地で異なる。 日本国憲法89条により「公の支配」に属さない教育事業に対する公金支出が禁止されていることがフリースクール等に対する財政支援を困難にしていると指摘されている。本調査を通じて、①事業実施後の現地調査を行い監査による使途統制を行っている、②事業主体を法人に限定している場合はそれぞれ根拠法に従い行政による監督を受けている、③公の利益に沿わない場合は是正しうる手段が確保されていること等により憲法との整合性が保たれていることが明らかになった。さらに、フリースクール等の多様性を尊重するために、監査の際にフリースクール等の教育内容に関する指示や命令は行われていないことも明らかになった。 教育機会確保法の見直しに際し、適切な普通教育の機会を保障する観点から、政府による財政支援については一定の基準を満たすフリースクール等に対する補助も含めて議論する余地があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載した2018年度に実施すべき課題は概ね順調に遂行できている。調査②における不登校支援機関に対する質問紙調査については、例年新たな研究成果が数多く公表されていることから、質問票や調査方法について再検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度より、公立の不登校特例校を対象とした調査を開始する。なお、調査にあたっては、昨今の教員の勤務状況を踏まえ、協力者に極力負担をかけない方法を吟味する。 また、質問紙調査については上述の通り例年各所から公表される研究成果を注視し、必要に応じて調査方法を柔軟に再考し、真に効果が期待される研究を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
公文書の開示請求に係る費用が予定よりも低く済んだため。今年度より開始する調査に必要な旅費として使用する。
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