研究実績の概要 |
本研究の目的は、雑誌、新聞、インターネットの記事を分析することにより、2000年代以降の〈不良少年〉言説の特徴を明らかにすることである。2年目にあたる2019年度は、以下の三つの作業を行った。 第一に、朝日新聞のデータベース「聞蔵Ⅱ」を用いて、1989年から2018年までの30年間で「非行」というワードが含まれる記事を整理・分析した。その結果、明らかになったことは、次の点である。1989年~1996年までは学校教育の問題に言及する記事が多く含まれていたのに対して、1997年~2000年になると、少年法改正との関連で非行に言及する記事が多くなっていた。さらに2000年代になると、非行少年の処遇をめぐる問題(たとえば、施設や送致、相談、家裁といった用語)として語る記事が多くなっていた。加えて、とりわけ2010年代に新聞で多く取り上げられていた事件は、2015年に少年が起こしたものと同年に少女が起こしたものがあり、それらを対比しながら分析していくことで、2010年代の少年犯罪の語られ方が分析できるのではないかという示唆を得ることができた。2020年度以降は、その二つの事件に分析の焦点をあわえて分析をしていく予定である。 第二に、インターネット上における〈不良少年〉言説を分析するための事前準備を進めた。インターネット上の言説を分析した研究は、近年、国内外を問わず数多くなされるようになってきた。それらの先行研究の流れを把握するとともに、分析手法について検討を行った。 第三に、〈不良少年〉に関する研究において重要な位置を占めるP. Willisの『ハマータウンの野郎ども』(熊沢誠・山田潤訳, 1996, 筑摩書房)の受容のされ方が日本とイギリスでどのように異なるのかを検討した。
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