研究課題/領域番号 |
18K13221
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
横田 晋務 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (70734797)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 潜在的態度 / 態度変容 |
研究実績の概要 |
本研究では、ASDに対する態度はどのように形成されるのかという点を明らかにするため、ASDに対する潜在的態度を測定するための課題を開発し、身体障害に対する潜在的態度との比較、およびASDへの態度形成に影響を及ぼす要因の解明と肯定的変容を促すための教育プログラムの作成を目的とする。この目的を達成するため、定型発達者における自閉スペクトラム症(ASD)者に対する潜在的態度について、次の3点を明らかにすることを目的とした。すなわち、①潜在的態度測定課題を開発しASDとその他の障害に対する態度との差異、②潜在的態度に影響を与える要因、③潜在的態度の変容を促すためのプログラムの開発である。 今年度は、上記①から③において使用するための課題として、ASD者、身体障害者に対する潜在的態度を測定する2種類の課題の開発を行い、10名の定型発達大学生を対象に、開発したIAT課題と顕在的な態度指標との関連を検討する行動実験を行った。結果として、潜在的態度課題の成績と顕在的指標との間に関連性はなく、顕在的な態度とは異なる面を測定することができている可能性が見出された。 また、大学教員と学生を対象として、障害学生への支援に対する意識に関して質問紙調査を行い、身体障害学生とASD学生への支援認識の差異について検討を行った。結果として、学生が支援主体となることに対する許容度が対象群間で異なること、ASD学生に対して周囲が支援を行う場合、教員では、授業中の情報伝達方法の工夫、学生では、授業環境の整備やグループワークでの役割分担の実施可能性が高いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、潜在的態度測定課題の開発を目的とした。ASD者、および身体障害者に対する潜在的態度を測定する2種類の課題(態度IAT)を作成した。この課題の実施可能性、および妥当性を検討するため、既存の顕在的態度に関する質問紙とともに態度IATを定型発達大学生に実施した。顕在的態度に関する質問紙は本邦で広く使用されている多次元態度尺度(生川ら,1995)および、Attitude toward disabled people (ATDP; Antonak, 1982)を使用した。結果として、態度IATの成績(Dscore)と顕在的態度との間に関連性は認められず、態度IAT指標が顕在的態度とは異なる態度を測定している可能性が明らかとなった。一方で、今回の行動実験では、ASDに対する潜在的態度の成績と身体障害に対する成績との間に有意差を見出すことはできなかった。また、本研究では、機能的磁気共鳴画像法による信頼性の検証を予定しているが、今年度は実施できていないため、やや遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
行動実験の結果、潜在的態度を測定する課題は、顕在的態度指標とは異なる面を表す指標であることが明らかとなったが、ASDに対する潜在的態度指標と身体障害に対する態度指標との差異が認められなかった。この差異が認められなかった原因として対象者数の少なさが第一に考えられるため、今後は対象者数を増やし、ASDと身体障害との差異を検討する。さらに、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた検討を行うため、脳活動データパターンから潜在的態度の予測可能性を検討し、客観的指標に基づいた妥当性の高い潜在的態度測定課題の開発、および障害の違いによる潜在的態度を比較する。方法として、ASD、身体障害に対する潜在的態度を測定するIAT課題(態度IAT)を実施する。態度IATは、Greenwald et al.(2002; 1998)を参考に作成済みであり、課題数や課題提示時間などについて、予備心理実験により最適化を図る。また、同時に、社会的望ましさ尺度(Marlowe-Crowne Social Desirability Scale)、障害者への顕在的態度尺度(Multidimentional Attitude Scale toward Persons with Disabilities)を取得する。fMRI実験については、社会的弱者や被差別対象に対する先行研究を参考に、態度IATで用いた画像について、障害者と定型発達者を区別する課題を作成し、課題中の脳活動データを取得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)のデータ取得ができなかったことが理由である。次年度は、東北大学加齢医学研究所にてfMRIデータ取得予定であるため、旅費、およびデータ取得に必要となる物品(PC、認知検査)の購入を計画している。
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