研究課題/領域番号 |
18K13221
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
横田 晋務 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (70734797)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 潜在的態度 / fMRI |
研究実績の概要 |
大学を初めとした高等教育機関に在籍する全障害学生は増加しており、本研究で対象とする自閉スペクトラム症(ASD)のある学生も増加傾向にある。ASDは、肢体不自由や感覚障害とは異なり,本人の障害が周囲の学生や教職員から見えづらい(可視性が低い)。そのために、本人の困難さに対する理解が得られにくく、支援の円滑な導入が困難な状況にある。したがって、障害学生支援の充実には、障害学生を取り巻く周囲の存在の障害者に対する態度について検討する必要があると考えられる。以上を踏まえ、本研究では、障害に対する潜在的態度に焦点を当て、潜在的態度測定課題の開発、障害種による態度の比較、潜在的態度に影響を及ぼす要因の検討、および態度変容に効果的な介入法の検討を目的とする。 顕在的態度における障害種による違いを検討するため、大学教員と学生を対象として、障害学生支援に対する態度に関する支援認識の差異についての検討を行った結果、支援を行う主体によって、教員、学生における態度が異なること、ASD学生に対する支援への態度は身体障害学生に対する態度よりも否定的であることが異なることが明らかとなった。また、どのような支援を行うかという支援の種類によっても対象群間で態度が異なることも明らかとなった。 また、潜在的態度測定課題の妥当性を検討するため、大学院生36名を対象として、障害に対する顕在的態度、社会的望ましさ、障害に関する知識を捉えるための質問紙調査、障害に対する潜在的態度を捉えるための行動実験、および機能的磁気共鳴画像法による脳機能イメージング実験を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度開発した障害に対する潜在的態度を測定する行動実験課題の妥当性を検証することを目的とし、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)による脳機能イメージングデータ取得を行った。 障害疾患のない大学生、大学院生36名を対象として、障害に対する顕在的態度、社会的望ましさ、障害に関する知識を捉えるための質問紙調査、障害に対する潜在的態度を捉えるための行動実験、および行動実験で使用した刺激(人のシルエット)を用い、one-back課題、人数集計課題の2課題を用いたfMRI実験を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度取得した脳機能データについて解析を進め、自閉スペクトラム症(ASD)に対する潜在的態度の神経基盤の解明を行う。その際には、multivoxel pattern analysisの解析方法を用い、行動実験により取得したデータの妥当性についての機能データからの検証を行う。 また、教育的介入によるASDおよびその他身体障害に対する潜在的態度の変容を明らかにするため、障害に関する授業受講した学生を対象とし、質問紙及び行動実験によるデータを収集する。質問紙については障害に対する顕在的態度に関する先行研究いて使用されたものを用い、行動実験に関しては潜在的態度を測定するIAT を用いる。対象者それぞれに対して授業受講前、受講後、さらに授業の効果の継続を検討するためにフォローアップとして1ヵ月後の3時点でのデータを取得し、縦断的な変容について検討を行う。 授業内容に関しては障害に関する知識的な理解および体験的な理解、支援技術の習得を目的とし、一方的な講義だけでなく、各障害の体験やグループディスカッションなどを踏まえた多面的な内容となっている。将来的にはこのような授業形態だけではなく、動画視聴などの多様な授業形態における態度変容についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度fMRI実験が実施できなかったため生じた今年度使用額を使用してfMRI実験を行なったため、今年度支給額が次年度使用額となった。これについては来年度実施を予定している介入研究に使用する予定である。
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