研究課題/領域番号 |
18K13236
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山口 洋介 大阪大学, 人間科学研究科, 招へい研究員 (60769602)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 創造的思考 / 創造性教育 / 創造的思考観 / アイデア生成 / デザイン思考 |
研究実績の概要 |
3年目は、創造的思考力に対する実践的な介入を通して、トレーニングの開発および洗練化を実施した。介入においては、創造的思考力を、1)アイデアの観察・評価に関する能力、2)アイデアの生み出し方に関する能力、3)アイデアを実行に移す能力、という3つの側面から捉えた。各側面に関する効果的な説明のあり方を検討するとともに、それぞれのトレーニング手法について理解を深めた。なかでも、1点目のアイデアの観察・評価に関する能力の育成に重点を置いた。観察・評価に関する能力は、その重要性が他の側面に比べて過小に評価されがちであるが、どのような方向性で考えようとするかの決定に関与しているほか、思いついたアイデアの潜在的な価値を適切に判断し、発展させていくために必要になるなど、創造的思考のプロセス全体の成否に大きな影響を与えていると推測される。介入プログラムでは、観察・評価の際の視点について紹介し、アイデアの生成においていかに重要な役割を果たしているかを体験的に説明しながら、その能力の向上を図った。介入の結果、大半の参加者において、創造的思考のプロセスに関する理解の深まりが認められ,適切な技術の獲得に関しても大いに効果的であったことが示唆された。加えて、創造的思考観、すなわち、創造的思考そのものに対する認識にも変化が生じていたことが報告された。介入プログラムに関して一定の枠組みができつつある一方で、参加者によって、トレーニングのなかで印象的だと受け止めた内容には違いが見られた。今後、各人がもともと有している思考プロセスや信念と、指導内容との間で、どのような効果的なパターンが見られるのかを分析することが課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
教育的介入プログラムの開発を行うとともに、その実践を通して、新たな知見を見いだすことができるなど、一定の成果が得られている。一方で、Covid-19による影響で、予定していた一対一の対面形式での縦断的な介入データの収集が困難な事態となった。課題の遂行およびインタビューに、比較的長時間を要するため、マスクを着用していたとしても、感染リスクが懸念される。実施のタイミングを見計らっていたが、今後もしばらくは、当初の形での実施は難しいことが想定されることから、オンライン形式による実施に切り替えて、データの収集方法を見直しつつ、より多くの参加者を対象に進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
4年目は、より多くの参加者を対象として、思考プロセスを収集・分析するとともに、探索的な介入による変化を調べることによって、個に応じた介入プログラムの洗練を図る。そうして得られた知見を基に、できるだけ多様なパターンを組み込んだ体系的な手引書の開発を目指す。なお、内容に関しては、随時、現職教員や大学生等に意見をもらい、改善を試みる。また、効果検証に関して、当初は大きめのサンプルを対象とした介入を実施する予定であったが、Covid-19による影響等を考慮し、基本的には個別もしくは小規模での実施を繰り返すことで、なるべく多くのサンプルの収集を目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19による影響で、対面形式で実施予定であった縦断的な介入データの収集が困難となり、そのための経費に残額が生じた。次年度、方針を転換し、データ収集の仕方を見直しながら、オンライン形式で実施する予定である。また、各種学会や研究会がオンライン開催となったため、成果発表および情報収集の用途として計上していた旅費が、未使用となった。Covid-19の感染拡大状況にもよるが、次年度において、新たに学校現場等を対象としたフィールドワークを実施することを検討している。
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