わが国の男性の育休取得率は低水準であり、育休取得日数も少ないのが現状である。本研究では、1ヶ月以上の育休を取得した男性に焦点を当て、キャリア意識や心理社会的変化などの心理的側面を解明し、男性の長期育休取得を促進するための企業がとるべき心理社会的支援について検討した。 平成30年度は、長期育休を取得した男性のキャリア意識および心理社会的変化のプロセスに関する探索的検討(研究1)を実施した。民間企業において1ヶ月以上の育休を取得した男性14名を対象としたインタビュー調査を行い、育休を通してキャリア意識や気持ちがどのように変化したのか、それが復職後の行動や考えにどのような影響を与えたのかについて、一連のプロセスを明らかにした。また、企業における男性の育休取得を支援するプロセスに関する探索的検討(研究2)も実施した。1ヶ月以上の育休を取得した男性が所属する民間企業12社を対象としたインタビュー調査を行い、男性の育休取得を推進している背景や具体的な取り組み、またその成果や課題について明らかにした。 令和元年度は、男性のキャリア意識および長期育児休業取得に関する研究(研究3)を実施した。10歳未満の子をもつ既婚の20代~40代の男性就業者653名を対象としたインターネット調査を行い、育休がキャリア自律やワーク・ファミリー・ファシリテーションに及ぼす影響について明らかにした。 令和2年度は、男性の長期育児休業取得に対する企業の心理社会的支援に関する研究(研究4)を実施した。男性の育休取得を推進している民間企業300社を対象とした郵送調査を行い、促進ルール策定、風土醸成、職場支援といった男性の育休取得推進策と、従業員の意識変化、ワークライフバランスの実現、組織体制の強化といった成果との関連について明らかにした。 令和3年度は、以上の研究成果をとりまとめ学会発表や学術雑誌への論文投稿を行った。
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