研究課題/領域番号 |
18K13365
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
金子 沙永 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (60763183)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 明度 / 錯視 / 個人差 |
研究実績の概要 |
本課題では心理物理的手法と脳機能計測(脳波、fMRI)の2つの手法を組み合わせて、視覚情報処理において空間的時間的文脈がどのように利用されているかを明らかにすることを目指している。本年度は空間的文脈効果のメカニズムを探る心理物理実験を中心に実施した。本研究では過去の自身の研究から明らかになった同時対比(空間的文脈効果の一種)の時間特性の普遍性を明らかにすることを目的の一つとしていた。本年度は2019年度に国外で実施した明度知覚に関する空間的文脈効果(Kaneko & Gilchrist, 2020)の発展的実験を実施した。本実験では先行研究で示唆された観察時間が明度知覚に与える影響について、観察時間条件を拡充した上で実験デザインも改良した。本実験結果は、過去の自身の研究で確認された指数関数的錯視量の変化が明度錯視2種類においても見られることを新たに発見した。この成果は自身の先行研究で見られた知覚のダイナミックな特徴が限定的な現象にのみ観察されるものではなくある程度普遍的なものであることを示唆する。本研究はRutgers大学のGilchrist教授との共同研究として実施しており、本成果は現在論文投稿準備中である。また本年度中に複数の視覚属性において生じる同時対比の個人差解析を行うための予備実験も複数回実施した。予備実験の結果、実験手続きに起因すると思われる予期していなかった効果が複数の実験に渡って観察され、当初予定していた解析を行うことはできなかった。この効果について次年度に実験手続きを改善した上で新たなデータを得ることとしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までに実施する予定であった実験計画に関して、心理物理学実験に関しては概ね実施することができた。前年度までに得られたfMRI実験、脳波実験データに関しては、解析の技術的問題などがあり進捗が滞っている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得られている実験結果を対外的に発表する機会を確保することを最重要課題と設定する。R4年度に得られた明度知覚に関する成果は国際学会において発表すると同時に国際学術誌への投稿を前半までに行う。またR3~4年度までに得られた色情報処理に関するSSVEP実験データに関しても現在準備中の論文の投稿を急ぐ。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた実験の一部を実施することができず、また一部の実験は授業の一環として行った。また国際共同研究として進めているプロジェクトの論文化が遅れており、予定していた投稿費を使用しなかった。これらの未消化の課題を次年度に引き継ぎ当該予算を次年度に使用する。
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