研究課題/領域番号 |
18K13447
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
佐々木 多希子 明治大学, 理工学部, 助教 (30780150)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非線形波動方程式 / 爆発現象 |
研究実績の概要 |
本年度は,変分構造を持たない非線形波動方程式の爆発曲線がどのような特異性を持つのか,またその特異性が何に依存するのかを証明した. Merle-Zaag (2012)により,方程式の解が変分構造を持つ波動方程式の爆発曲線が,解が符号変化するときに,微分不可能になることが示されていた.この性質が,非線形項にある程度依存せずに成り立つ一般的なものなのか,変分構造を持つ非線形波動方程式の爆発曲線の特殊な性質なのかは分かっていなかった.そこで,非線形項に未知関数の時間微分導関数を含む波動方程式の爆発曲線を考察した(この波動方程式は変分構造を持たない).この非線形波動方程式の初期値に条件を課した際に,爆発曲線が特異性を持つことを証明した. どのような特異性を持つのか:爆発曲線の特異性に,非線形波動方程式の線形部分の性質が現れる,具体的には波動方程式の特性曲線の傾きが特異性に現れることを証明した.また,ある条件下で特異性は測度を持たないことを示した.さらに,爆発曲線の特異性が現れるところ以外では,波動方程式の解が爆発曲線付近で,ある常微分方程式の爆発解と似た性質を持つことを示した. 特異性が何に依存するのか:波動方程式が変分構造を持たない場合にも,解の符号変化やある種の単調性によって,爆発曲線に特異性が発生することを証明した.この証明手法は波動方程式の爆発解の数値解析に基づいている. これらの結果を国際研究集会で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ある初期条件のもとで,変分構造を持たないある非線形波動方程式の爆発曲線の特異性の発生やその形状,原因を明らかにするなど,順調に研究成果を得ている.また,国内外の研究者と共同研究を行っており,順調に研究が進んでいると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
変分構造を持つ波動方程式と,変分構造を持たない波動方程式両方の爆発曲線の特異性を解析し,爆発曲線の特異性について,統一的な理論の構築を目指す.国内外の関連分野の研究者と研究交流をし,研究内容について批評を受ける.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行状況から,今年度のフランスへの共同研究のための渡航予定を変更した.この助成金は,次年度にスペインで行われる応用数学の国際研究集会への参加,また,フランスでの共同研究のための旅費で使用する予定である.
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