研究実績の概要 |
代表者が開発している一般相対論的多波長輻射輸送コードRAIKOUをさらに発展させ、世界で初めてX線のブラックホールシャドウを計算可能にした。そしてコード論文を執筆し、Astrophysical Journalに受理された(Kawashima et al. 2023)。また、RAIKOUコードを用いて、銀河中心Sgr A*のブラックホールシャドウや多波長スペクトルを計算し、イベント・ホライズン・テレスコープによるSgr A*のシャドウ初観測論文の理論解釈に貢献した(EHT Collaboration 2022)。 上記の例は、非常に降着率が低い場合の降着円盤でなおかつ超大質量ブラックホール(太陽質量の100万倍を超えるような質量のブラックホール)に適用した実績である。RAIKOUコードを降着率が高くコンプトン散乱が支配的になる場合の計算にも適用し、恒星質量ブラックホール周囲の極めて広範囲な領域に広がった降着流モデルのX線スペクトル計算も実施し、新たな知見が得られた。 また、ブラックホール降着円盤やコロナから放出されるX線偏光を計算すべく、RAIKOUコードの拡張を行なった。具体的にはWalker-Penrose定数と呼ばれる座標不変量を用いて曲がった時空中における偏光ベクトル基底およびストークス・パラメータ(I,Q,U,V)の輸送計算モジュールを作成・実装した。Chandrasekahrによる平行平板からの偏光を含む放射や反射の解析解を用いた標準円盤からのX線偏光マップおよび偏光を含むスペクトルについてのテスト計算を実施し、先行研究(Schnittman & Krolik 2009, 2013)の結果を再現することに成功した。
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