本研究では,社会インフラシステムなどに代表される,多数の主体によって段階的に増改築されていく大規模なネットワークシステムに対して,その持続的発展を可能にするシステム制御理論の構築を行っている.より具体的には,申請者がこれまでに開発してきた,動的コントローラのレトロフィット手法(コントローラの分散的な増改築手法)に関する理論を基盤として,分散制御系を構成するコントローラやサブシステムを局所的に改変・拡張することによって,安定性や可制御性など,大局的なシステム特性や制御性能を段階的に改善していくためのレトロフィット制御理論を構築している.本年度の実績としては,前年度までに得られた解析結果に基づき,所望の分散制御系を実現するレトロフィットスキームの開発を行った.特に,標準的な電力系統モデルであるIEEE68バスシステムに対して,局所的に得られるデータから段階的に未知システムの動特性を学習していき,制御性能の向上を実現する拡張されたレトロフィット制御理論の適用を行った.さらに,システム制御工学における受動性の概念を拡張することによって,集合モデリングに基づく制御系設計手法の開発を行った.本手法をレトロフィット制御と組み合わせて使用することにより,負荷変動などの未知の外乱の影響を抑制しながら,地絡事故などの大きな変動にも対応可能な制御系の設計を行うことが可能となった。
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