研究課題/領域番号 |
18K13902
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
諫川 輝之 東京都市大学, 都市生活学部, 講師 (20733504)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リスク認知 / 空間特性 / 水害 / ハザードマップ / 台風19号 / 避難場所選択 / 暗渠 / 居住地選択 |
研究実績の概要 |
本研究は、被害を受ける範囲がある程度予想できる津波、洪水、土砂災害などの自然災害を対象として、人々の主観的なリスク認知状況を空間的な分布として可視化し、既存の想定等から算出される客観的なリスクと比較評価することで両者の乖離が生じやすい場所を抽出し、その空間特性を明らかにすることを目的としている。3年目の今年度は、以下の内容を実施した。 1.狛江市多摩川流域におけるリスク認知や避難行動の分析:昨年度狛江市猪方地区で実施したアンケート調査のデータをGIS上に入力し、居住地ごとのリスク認知や台風19号時の避難行動について詳細な分析を行なった。自宅と最初に避難した場所の位置関係を見ると指定避難所を選択した人は多くが自宅に近い避難所へ避難した一方、指定以外の場所を選択した人は自動車を用いた広域的な避難を行なった人が多いことが示され、避難場所選択時に重視する内容の違いが行動に表れたと考えられる。 2.暗渠周辺住民の水害リスク認知に関する調査分析:内水氾濫が発生しやすい暗渠に着目して、世田谷区内の暗渠周辺住民に対して暗渠の認知や水害リスク認知に関するアンケート調査を実施した。その結果、緑道として整備された暗渠はそうでない暗渠よりも暗渠の認知率が多く、暗渠であることを知っている人は知らない人より水害リスク認知が高いことが明らかになった。 3.河川周辺住民の居住地選択要因に関する調査分析:居住地の選択時に水害リスクがどの程度考慮されているのかを明らかにするため、水害リスクの有無が異なる埼玉県東松山市の高坂とあずま町の住民にアンケート調査を実施し分析を行なった。居住地選択時に安全性を重視する人は全体的に少ないものの浸水想定区域内外でその程度には差があった。災害リスクに関する情報収集量には大差がなく、今後災害リスクが低い地域に人々を誘導するためにはリスク情報を提示するだけでは不十分なことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、地域の空間特性と災害リスクが密接に関係する水害について、3つのサブテーマを設定し、研究を行なった。狛江市における調査では、地図に回答が記入された避難者のデータをGIS上に入力し、都市空間の中でのリスク認知の分布や避難場所選択に関する詳細な分析を行なった。また、都市部においてその存在が見過ごされがちな暗渠が整備形態によって周辺住民にどう認知されているかという観点と、居住地選択において災害リスクがどのように影響しているかという観点からアンケート調査を実施し、それぞれ982件、499件の回答を得て分析を行なった。これらにより、客観的なリスクと主観的なリスクの乖離が生じやすい場所の空間的特徴に関して多面的な成果を得た。コロナ禍の影響で研究活動が制約される中、当初の計画以上に研究を進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで取り組んできた津波と水害という2つのハザードを対象に、住民のリスク認知の現状をハザードマップ等の情報に基づく客観的なリスクと重ね合わせて評価し、地形や道路、防災施設などに着目して考察を深める。 そして、これまでの成果を総括し、人々のリスク認知の歪みを類型化するとともに、それをふまえた情報伝達や意識啓発の方法を検討し、提案を行なう。 得られた結果を学会発表し、論文にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は大規模なアンケート調査を2件実施した関係で前倒し請求を行ない、結果として次年度使用額が生じた。当初の計画時より学会誌投稿料が値上げされているため、その支払いに充てる予定である。
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