研究課題/領域番号 |
18K13963
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研究機関 | 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 |
研究代表者 |
遠藤 雄大 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所, 電気安全研究グループ, 研究員 (80778324)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 静電気 / 噴霧帯電 / 酢酸エチル |
研究実績の概要 |
前年度は,ミネラルスピリットと導電性添加剤の混合液体(混合比率を変えて導電率を調節)を試料に用いて実験を行った結果,噴霧帯電の導電率依存性が確認された.本年度は,上記結果の妥当性を確認するために,導電率の異なる数種類の液体(酢酸エチル,エタノール,ノルマルヘキサン,水道水)についても同様の実験を行った.その結果,導電率10^-8 S/mの酢酸エチルで帯電量がピークとなり,そこから導電率が離れた液体ほど帯電量が小さくなることが確認された.したがって,やはり噴霧帯電量は液体の導電率に依存するものと考えられるが,各液体の噴霧帯電量は全体的に前年度の混合液体の帯電量よりも大きくなる傾向が見られた.このことから,導電率以外にも液体の噴霧帯電量を大きく左右する要因が存在するものと思われる. 上記の検討に加えて,前年度は使用しなかった2流体ノズル(ステンレス製,PTFE製)を用いて混合液体を噴霧した結果,1流体ノズル使用時と同様の導電率依存性を示した.また,噴出エア圧力を高めるほど帯電量も増加することを確認した.時間当たりの噴霧量が大きく異なるため単純には比較できないが,1流体ノズルよりも噴霧帯電量は大きくなる傾向が見られた.2流体ノズルでは,噴出エアを利用して液滴化されるため,液滴形成に要する時間が短く液体の電荷が緩和されづらいと考えられる. 本年度は,噴霧帯電量が導電率以外の要因にも左右される可能性を見出した.この点については,次年度の検討課題としたい.また,2流体ノズル使用時について,噴霧帯電量が大きくなる噴霧条件についても確認できた.本年度得られた知見は,断片的ではあるが,噴霧帯電による危険を回避するうえで有用なものと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は,数種類の液体による実験の他,噴霧帯電量の液滴噴出速度依存性(及び液体粘度依存性)を調査する予定であった.現在所有する機材よりも高性能の高速カメラが次年度(2020年度)に導入予定であることから,実験実施時期を次年度に延ばした.液体粘度依存性についてもその時に併せて調査する予定である.ただし,これらを実施しない分,その他の実験については,実験条件の数をより充実させることができたため,結果的に有用な知見が多く得られた.
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今後の研究の推進方策 |
噴霧帯電量を左右する液体の導電率以外の要因について検討するためには,多種類の液体試料を用いて実験を行う必要がある.しかしながら,現在の装置は比較的大きいため,実験の都度実施する装置の洗浄および乾燥に時間を要すること,実験に5L程度の比較的大量の液体を使用する必要があることから,作業効率等の面で問題があった.本年度までの実験成果から,ノズルを小径にして噴霧量を小さくしても,噴霧帯電量を小さく見積もる可能性はないことが確認されているため,より小型で少量(500ml程度)の液体試料で実験可能な装置を製作する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の実施を予定していた噴霧帯電の液体粘度依存性の調査のために,粘度調整剤を購入して実験する予定であった.実験実施を次年度に延ばしたため,粘度調整剤の購入も次年度に持ち越した.次年度は,この分の余った研究費で粘度調整剤を購入する予定である.
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