大規模な災害発生時には水道管の破損による漏水が発生する場合があり、その復旧には水道事業者が現地に赴き水道メーターの確認を行う必要が生じる。この問題を解決する手法として水道管内の水を通信路とした電界通信である水道電界通信について検討した。本研究では、水道網の伝送特性を明らかにするための等価回路化を目的としており、そのために各条件について実験及び電磁界数値計算によって検討を実施した。 最終年度でFDTD法による電磁界数値計算(使用ソフトウェア:sim4life)および等価回路化を行い、実験との比較によって妥当性を評価するために、研究期間全体を通して、研究計画に基づき「水道水の流水速度による伝送特性への影響」「水道中の異物による伝送特性への影響」「水道の形状による伝送特性への影響」について、主に実験による検討を行った。 その結果、流水速度による伝送特性への影響は非常に小さく、静止した状態の水のみを想定して水道電界通信に関する検討を行えること、水道中に土砂が混じった場合に水のみの場合とは明確な受信電圧の差が表れること、水道の形状による伝送特性への影響は、送受信端末間に存在する水道管の長さの影響が支配的であることを明らかにした。 これらをもとに、最終年度では土砂が混じっていない静止した水の条件について、I型、T型、L型などの水道の形状による電磁界分布・受信電圧への影響を数値計算によって求め、実験と比較して結果が妥当であることを確認した。また、妥当性を確認した数値計算結果を用いて水道電界通信の等価回路化を行った。これらの結果から、水道を伝送路とした場合の伝送特性や水道管の形状や水量、異物の混入、流水速度による影響を明らかにし、数値計算によって水道電界通信を用いた断水検出システムの構築に必要な種々の条件における伝送特性を電磁界数値計算による等価回路化によって検討できるようになった。
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