研究課題/領域番号 |
18K13984
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
上野 哲朗 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 放射光科学研究センター, 主任研究員(定常) (20609747)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 磁区構造 / 機械学習 / 磁性材料 / 磁気光学Kerr効果 / FORC / 磁気光学効果 / 磁化曲線 |
研究実績の概要 |
本研究では磁性材料の磁区構造と局所磁化曲線を同時に測定する手法を開発し、これらの計測・データ解析を機械学習と融合することで革新的な磁性材料開発基盤を構築する。磁性材料の磁気光学Kerr効果顕微鏡画像を外部磁場可変下で大量に撮影し、画像解析によって1ピクセル毎の局所磁化曲線の一括測定(およそ1,000,000箇所の磁化曲線の同時測定)を実現する。ベイズ推定などの情報科学手法を用いた測定の最適化、機械学習を用いた大規模実験データ・マイクロ磁気シミュレーションデータの解析によって磁性材料の磁化反転過程や保磁力発現に寄与する特異な相や微細構造の特定を試みる。
FORC測定のベイズ最適化の検討、磁気光学Kerr効果FORC測定システムの構築、Kerr効果顕微鏡FORC測定システムの構築と測定、情報科学を駆使した大規模データ処理による局所FORC解析手法の開発について研究を実施した。Kerr効果顕微鏡FORC測定システムを構築するため、磁気光学Kerr顕微鏡の試料ステージに搭載可能な小型電磁石の試作と動作試験を行なった。磁気光学Kerr効果FORC測定システムの信号処理系と制御ソフトウェアの開発を行なった。 並行して、将来的にこれらの測定システムの測定対象となる実用材料のテスト測定に着手した。永久磁石材料候補物質Ce-Co-Cuの磁気光学Kerr顕微鏡測定を行い、適切な表面研磨条件を見出すとともに、磁区像の観察に成功した。試料の化学組成、熱処理の有無によって異なる磁区像が得られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
試料振動型磁束計を用いたバルク平均FORC測定、情報科学を駆使した大規模データ処理による局所FORC解析手法の開発、モデル系への局所FORC解析の適用、マイクロ磁気シミュレーションを用いたFORC解析など複数の研究項目について進捗がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画に基づき、FORC測定のベイズ最適化の検討、試料振動型磁束計を用いたバルク平均FORC測定、Kerr効果顕微鏡FORC測定システムの構築と測定、情報科学を駆使した大規模データ処理による局所FORC解析手法の開発、モデル系への局所FORC解析の適用、磁気光学Kerr効果FORC測定システムの構築、マイクロ磁気シミュレーションを用いたFORC解析を引き続き行う。また今年度実施した実用材料のテスト測定を通して、磁気光学Kerr効果顕微鏡用の試料調整(試料表面研磨)が今後のボトルネックとなる可能性があることが明らかになった。研磨装置の自動化・ロボット化による効率化を検討する。 令和2年度は研究期間の最終年度であるため、研究項目を整理し優先順位をつけた上で成果を最大化できるよう努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度購入予定だった光弾性変調器について、所属機関内の別研究グループから借用できることになり、購入が不要となった。そのための予算を計測機器・ソフトウェア等に充当したため差額が次年度使用額として発生した。次年度使用額は光学部品等の消耗品の購入に充てる予定である。
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