研究課題/領域番号 |
18K14560
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
上村 直史 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (50646528)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リグニン / フェルラ酸 / バニリン酸 / センサー / バクテリア / 蛍光タンパク質 / 転写制御 |
研究実績の概要 |
リグニンは自然界において「真菌等による低分子化分解」と「生成した芳香族化合物のバクテリアによる代謝」を経て無機化されると考えられている。一方、環境中でのリグニン分解産物は同定が困難であり、バクテリアが実際にどのようなリグニン由来化合物を代謝しているかは明らかでない。本研究では、リグニン由来芳香族のモデル分解菌であるSphingobium sp. SYK-6株の転写制御システムを応用し、リグニン由来モデル化合物として認知されているフェルラ酸等の代謝を検出できるセンサーバクテリアを開発することを目的とする。 センサーの宿主は、多様なリグニン由来芳香族化合物を細胞内に取り込み・代謝する実績をもつSYK-6株が適すると判断した (Kamimura et al., Environ Microbiol Rep, 2017)。SYK-6株で利用可能なレポーター用蛍光タンパク質遺伝子を調査した結果、eGFP及びmCherryが適切に発現・機能することが示された。フェルラ酸の代謝時に特異的に誘導されるSYK-6株のferBプロモーターをeGFP遺伝子の上流に連結したレポータープラスミドを構築し、本プラスミドを保持したSYK-6株のフェルラ酸センサーとしての機能を評価した。本株は、フェルラ酸を含む、LB培地、スクロースを炭素源とする無機塩培地、そして土壌懸濁液でインキュベートした場合のいずれの条件でも蛍光を発した。またバニリン酸には応答しなかったことからフェルラ酸存在下で特異的に応答することが示唆された。以上より、環境中のフェルラ酸の検出に適用可能なセンサーバクテリアを開発することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画どおり、フェルラ酸の代謝時に特異的に誘導されるSphingobium sp. SYK-6株のferBプロモーターをeGFP遺伝子の上流に連結したレポータープラスミドを構築し、本プラスミドをSYK-6株に保持させることにより、フェルラ酸を検出できるセンサーバクテリアの開発に成功した。また、検出対象化合物の拡大を目的とし、ビフェニル構造を有するバニリン酸二量体の転写レギュレーターと制御プロモーターについてlacZをレポーターとしたアッセイにより明らかにした。さらに、本センサーの環境中での適用実験は次年度以降を計画していたが、先行的に検討した結果、土壌懸濁液においてもフェルラ酸に応答できることが見出され、計画以上に進展させることができた。一方、計画の想定内ではあるが、本センサーのフェルラ酸応答感度は悪く10 mM以上のフェルラ酸を要求したため、次年度は感度向上を目的としたセンサーの改良を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
1)センサーの改良:ferBプロモーターの誘導物質であるフェルラ酸代謝中間体のフェルロイルCoAの細胞内濃度を向上させるために、フェルロイルCoAを蓄積できるferB ferB2二重破壊株を宿主として利用する。また、フェルラ酸からフェルロイルCoAを生成するために必要なferAを構成的プロモーターに連結してプラスミドに導入する。これらに加え、ferBプロモーターの-35及び-10配列をSYK-6株の高発現プロモーターを参考に改変しさらに感度向上を狙う。一方、S/N比向上を目的としてferBプロモーターの制御因子であるFerCをプラスミド上から発現させる。 2)バニリン酸、プロトカテク酸、アセトバニロン、ビフェニル型化合物用のセンサー開発 バニリン酸、プロトカテク酸、およびビフェニル型化合物を誘導物質とする転写制御システム(転写レギュレーターと制御プロモーター)は既に明らかにしている。これら転写制御システムを利用したセンサーの開発を進める。アセトバニロンについては、転写レギュレーターは同定済みであることから、制御プロモーターを解明次第センサーの開発に着手する。
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