細胞周期を阻害する天然物は、創薬シードあるいはケミカルプローブとしての利用が期待される。本研究では、HeLa/Fucci2細胞を用いたHTSにより天然物エキスライブラリから細胞周期阻害物質を探索した。 本年度は、前年度構築したHeLa/Fucci2細胞の表現型スクリーニングによって見出した細胞周期阻害作用を示す新規化合物について、作用機序の解析を実施した。昨年度までに単離構造決定を達成した新規化合物に加えて、複数の新規類縁体を単離し、化学構造を決定した。また、単離した類縁体についてHeLa/Fucci2細胞に対する細胞毒性を評価し、構造活性相関研究を実施した。類縁体の中で最も低濃度で細胞増殖を抑制した化合物について、HeLa/Fucci2細胞の蛍光タイムラプスイメージングによって細胞周期に与える影響を詳細に解析した。その結果、本研究によって見出した新規化合物は、細胞周期の進行を特定の細胞周期で停止させるのではなく、細胞周期の時間を延長する作用を示すことが明らかとなった。細胞周期を停止する化合物は複数報告されているが、細胞周期を延長する化合物に関する報告例は少ない。現在、細胞周期延長作用を示す化合物について作用機序を解析中である。 本研究を通して、細胞周期阻害作用を示す天然物を効率的に発見することが可能なスクリーニング系を構築し、複数の新規化合物を発見した。また、本研究によって見出した化合物が細胞周期を延長させるという特徴的な生物活性を示すことを明らかにした。
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