これまでのCagA-SHP2複合体研究は、培養細胞に発現させたCagAを用いた生化学的実験によるものであり、構造学的解析は多くない。本研究により、構造解析に必須なCagAの組換えタンパク質をチロシンリン酸化体の精製が可能となったことにより、CagA-SHP2複合体の構造生物学的解析を世界に先駆けて遂行することが可能となった。今後、本研究の成果を起点としてCagAの発がん生物活性発現機序の構造学的知見が得られれば、ピロリ菌感染を起因とする胃がんに対する治療薬の開発に繋がりうる。胃がん患者の98%以上がピロリ菌感染陽性であることを考慮すると、本研究成果の学術的意義は大きい。
|