Diamond-Blackfan 貧血(DBA)は、赤芽球への分化異常によって引き起こされる先天性疾患である。代表的な原因遺伝子はリボソームタンパク質(RP)をコードするRPS19である。興味深いことに他のRP遺伝子でも変異が報告されている。全患者の約半数がRP遺伝子に変異を持つことから、DBAはリボソームの異常に起因する「リボソーム病」の代表疾患であると考えられている。現在最も有力とされているDBA発症機序は、RP遺伝子の変異によりガン抑制遺伝子TP53が活性化し、その経路が関与するというものである。しかし、DBAが発症する仕組みは完全には理解されておらず、不明な点も多い。小型魚類であるゼブラフィッシュは、造血系の解析において有用なツールであり、DBA疾患モデルが作出されている。今回これを用い、RPS19のリン酸化状態が造血に与える影響を解析したところ、RPS19の可逆的なリン酸化制御が赤血球造血に重要である可能性を見出した。以前、培養細胞を用いてRPS19がリン酸化酵素PIM1によって強くリン酸化されることを明らかにした。そこで、このゼブラフィッシュオーソログをノックダウンおよびノックアウトした結果、赤血球造血が障害される貧血様症状を確認した。また、複数の造血関連因子遺伝子発現が変動したことから、RPのリン酸化が造血に関与することが示唆された。今後はリン酸化が造血に与える影響をより詳細に検討し、TP53以外の経路やRP変異に依らないDBA発症メカニズムの解明を目指す。
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