研究課題
本年度はまず、HIEモデルマウス作成10日後にヒト羊水幹細胞(hAFS)を単回鼻腔的投与し、ロタロッドテストにて運動能の検討を行った。これまでの脳実質面積の患側/健側比の改善、前肢運動能の左右差の改善、Astrocytosisやmicroglial activationなどのNeuroinflammation抑制、脳実質のNeuronやOligodendrocyteの保護に加えて、hAFS投与による有意な運動能改善効果を認めた。さらに、脳組織病理標本を用いて複数のヒト特異的抗体を用いて免疫染色を行ったところ、投与したhAFSは投与後24時間を中心に脳実質へと移行するものの生着は一過性であり、投与後48時間後にはほとんど脳実質には観察されなかった。また、hAFSにHIEモデルマウスの脳実質から抽出したタンパク溶解液を加えたところ、脳保護作用を有する複数の液性因子(BDNF、NGF、HGF)のmRNA発現が上昇することを見出した。本研究の結果は、国内外の学術集会にて報告し、さらに英文雑誌に投稿し受理された。次に、スフェロイド化、低酸素負荷、分化誘導等、の事前調整は、 通常の単層培養した間葉系幹細胞と比較して、in vivoでの細胞移植の治療効果を高めるとの仮説の検証を開始した。我々は、まず初めにhAFSスフェロイドを神経系細胞に誘導しニューロスフェア作成を試みた。hAFSスフェロイドは単層培養hAFSと比較し未分化マーカーであるOct4, NanogのmRNA発現が有意に上昇したことから、ニューロスフェア作成が大いに期待された。しかし、市販の複数の神経系細胞への分化誘導培地を用いた検証ではその実現に至らず、根本的な実験計画の変更が余儀なくされた。
3: やや遅れている
hAFSスフェロイドを神経系細胞に誘導しニューロスフェア作成を試みたが不成功に終わったため。
本年度の研究活動により、hAFSの鼻腔内投与は、一過性の脳への細胞生着を介して、おそらくparacrineな機序により、HIEモデルマウスの神経系細胞を保護し、神経炎症を軽減することで運動能を改善する、との報告を世界に先駆けて行うことができた。来年度は脳性麻痺に対するヒト羊水幹細胞治療の最適化に向けて、臨床応用を考慮した時に必須となるアニマルフリーな環境でのhAFS培養、細胞投与量・投与時期・投与回数・投与経路の最適化などの検討を行いたいと考える。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
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