研究課題
視床下部弓状核は末梢臓器の栄養状態を感知するエネルギー代謝情報の中枢におけるゲートウェイであり、レプチンやインスリンなどの末梢由来ホルモンに応答する細胞が存在する特殊な脳領域である。これまでにわれわれは、肥満マウスにおける視床下部のRNA-Seqによるトランスクリプトーム解析を行うことにより、脳内では弓状核に極めて限局した発現を示し、かつ食事性肥満により弓状核のみで特異的に発現増加を示す内在性セリンプロテアーゼ阻害分子、Serpina3を同定した。本研究ではSerpinA3発現細胞を明らかにし、SerpinA3がエネルギー代謝恒常性において果たす生理的、病態生理的意義を解明することを目指して取り組んでいる。脳切片を用いた免疫染色実験でのSerpinA3発現細胞の分布解析に加えて、視床下部神経核マイクロダイセクション法を用いて採取した微細脳領域を用いた、定量質量分析解析により、SerpinA3タンパク質の存在分布が弓状核に限局していること、高脂肪食で弓状核領域特異的に増加することを検証した。また、POMCニューロン特異的なCREリコンビナーゼ発現トランスジェニックマウスや対照群としての、AGRPニューロン特異的なCREリコンビナーゼ発現ノックインマウスとSerpinA3 floxマウスの交配により、これらニューロン特異的なノックアウトマウスの作出に成功し、代謝パラメータやレプチン応答性の解析を実施した。またマイクログリア細胞でのSerpinA3リコンビナントタンパク質による炎症応答増強作用に関する薬理学的メカニズム解析を実施し、SerpinA3がセリンプロテアーゼ阻害活性とは独立したマイクログリア活性化能を有する可能性を明らかにした。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 524(2) ページ: 385 - 391
10.1016/j.bbrc.2020.01.118