本研究では、乳がん臨床検体の解析で明らかになった、乳がん組織中の脂肪酸代謝と腫瘍免疫活性の強い相関の背景にある分子機構の探索を行った。結果、乳がん細胞において脂肪酸結合タンパクFABP7の発現が1)免疫チェックポイントの制御分子 PD-L1の発現を制御すること、2)単細胞からの増殖能を強く規定すること、3) 放射線照射や低酸素などの酸化ストレス耐性に関与すること、4)細胞の熱産生と温度調節に関与することが明らかになった。FABP7と腫瘍免疫活性は単純な1対1の相関関係ではなく、FABP7がストレス応答や熱代謝など多彩な生理機能に影響を与えることで腫瘍免疫の調節を行っていることが示唆された。
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