転移性大腸癌における原発巣切除による免疫状態変化と予後に関する検討

2023 年度 研究成果報告書

• 研究課題/領域番号: 18K16294
• 研究種目: 若手研究
• 配分区分: 基金
• 審査区分: 小区分55020:消化器外科学関連
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 市川 伸樹 北海道大学, 大学病院, 特任助教 (50779890)
• 研究期間 (年度): 2018-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: 大腸癌 / 切除不能転移性大腸癌 / 姑息的切除 / リンパ球単球比

研究成果の概要

切除不能転移性大腸癌の姑息的原発巣切除前後の末梢血リンパ球単球比（LMR）の変化を検討し、原発性腫瘍切除64例のうち39例はLMRが増加し増加率は平均1.57倍であった（LMR増加群）、一方残り25例ではLMRが減少し、平均0.68倍減少した（LMR減少群）。背景因子に大きな差を認めなかったが、発巣切除後のOSをLMR増加群とLMR減少群で比較すると、全生存期間中央値は、それぞれ27.3ヵ月および20.8ヵ月で（P = 0.02）、Cox回帰でもLMR低下は独立した予後不良因子であった。原発巣摘出検体の免疫染色ではCD8+とCD163+の浸潤細胞比率は、LMR増加例で有意に低い結果であった。

自由記述の分野

消化器外科

研究成果の学術的意義や社会的意義

切除不能転移性大腸癌において原発巣切除を行った症例の間でも、切除によりLMRの術後増加する症例は減少する症例よりは生命予後が良い可能性がある。今回、結果としてLMRが増加した症例と、減少した症例で予後及び組織学的特徴の差異を見出したが、どのような症例でLMRが増加、あるいは減少するかを術前に予見することで、原発巣切除が生命予後改善に寄与する症例を選別できる可能性がある。より症例数の多いコホートでバリデーションするとともに、本研究から得られた、組織でのCD8+：CD163+の比率を含め、より確固たる術前後LMR変化の予測因子を見出す事が今後の課題である。