転移を有する進行胃癌に対して、化学療法を含めた集学的治療がなされるが、時として原発巣と転移巣との間で治療効果の解離が認められる。この原発巣と転移巣の間のHeterogeneityは、治療抵抗性に関与するひとつの要因であり、その分子メカニズムの違いを解明することは胃癌治療における治療選択の一助となる。現在、胃癌に対して免疫チェックポイント阻害薬が有効であることが示され注目を集めているが、免疫チェックポイント阻害薬の効果予測因子についてこのHeterogeneityを検討した報告はこれまでにない。本研究では、胃癌原発巣と転移巣のHeterogeneityについて検討し、今後バイオマーカーとなりうる蛋白発現および遺伝子変異を探索することを目的として実施した。 胃癌の原発巣とリンパ節転移巣および腹膜播種巣については、当科で手術した胃癌切除検体を用いた。胃癌肝転移切除症例は極めて稀であるため、「胃がん肝転移症例(同時性、異時性)に対する化学療法施行後のsurgical intervention に関する第II相臨床試験(UMIN000011445)」の切除試料を用いて、試料収集を行った(現在試料収集を継続中である)。これらの試料を用いて、免疫チェックポイント阻害薬のバイオマーカーであるミスマッチ修復因子MLH1と免疫チェックポイント分子PD-L1発現について免疫染色を行い、リンパ節転移巣:103例、腹膜播種巣:48例、肝転移巣:30例(現在試料追加収集中)において、その発現を評価した。肝転移巣の試料収集が完了し、免疫染色結果がすべて評価可能となった時点で、その臨床病理学的特徴およびHeterogeneietyについて解析を行う予定である。また、収集した試料からDNAを抽出し、オンコパネルを用いた遺伝子解析を行うことを今後予定している。
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