研究実績の概要 |
本研究は、我々が独自の方法で膵癌細胞株(Parent cells)から誘導した膵癌幹細胞様細胞豊富な細胞集団(Lm cells)に含まれるCalreticulin(CRT)を細胞表面に表出した細胞の癌幹細胞性および免疫学的機能を解析することにより、CRTが膵癌幹細胞の新規治療ターゲットとなりえるかを検討することを目的とした。 誘導したLm cellsをfluorescence activating cell sorterを用いて、CRT陽性・陰性細胞に分離し、Parent cells、Lm cellsも含めて、Sphere形成能を解析した。Parent cellsと比較し、Lm cellsは高いSphere形成能を有していた。さらにLm cellsに含まれるCRT陽性細胞は、さらに高いSphere形成能を有し、一方CRT陰性細胞はSphere形成能を有していなかった。以上よりLm cellsのSphere形成能は、ここに含まれるCRT陽性細胞が担っていると結論した。 元々、膵癌幹細胞はCD24/CD44/Epitherial specific antigen(ESA)を同時に発現した細胞として同定された。CD24,CD44,ESAの発現の多寡でLm cellsをサブグループに分類し、それぞれのグループにおけるCRT発現を確認すると、CD24,CD44,ESAの全てを高発現したサブグループのCRT発現が他のサブグループと比較し、明らかに上昇していた。 最後にParent cells,Lm cellsとLm cellsに含まれるCRT陽性細胞の免疫関連表面抗原をフローサイトメトリを用いて解析した。HLA-class IはParent cell、Lm cells,CRT陽性細胞の順で発現が低下し、一方PD-L1は同順に発現が上昇しており、免疫逃避機構の一端をみているものと考えられた。
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