本研究では、がん性痛の末梢機序についてこれまで研究されていないTRPA1に注目した。結果、TRPA1遺伝子欠損マウスで作製した足底がん性痛モデルでは、野生型マウスと比較して腫瘍増殖および自発痛関連行動が有意に抑制されることが明らかとなった。TRPA1は主に末梢痛覚神経に発現しているため、TRPA1の機能抑制は中枢性の副作用のない鎮痛法開発につながる可能性が高い。TRPA1拮抗薬とオピオイドの併用により、オピオイドの投与量を減じても優れた鎮痛効果が得られ、かつ、オピオイドによる副作用を減じることが可能となりうる。これらはがん患者のQOL向上に大きく貢献すると考えられ、社会的意義は大きい。
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