研究課題/領域番号 |
18K16750
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
木全 貴久 関西医科大学, 医学部, 講師 (90593517)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 尿路感染症 / 予防的抗菌薬持続投与 / 膀胱尿管逆流 / 腸内細菌叢 / プロバイオティクス / ST合剤 |
研究実績の概要 |
膀胱尿管逆流(VUR)は、有熱性尿路感染症 (fUTI)を反復し腎障害を生じる可能性がある。近年の大規模研究で、VUR症例のfUTIの予防にST合剤の予防内服(CAP)の有用性が示された。通常尿路は、乳酸菌主体の腸内細菌叢が産生する活性酸素や酸性物質などが抗菌作用を発揮し無菌的に保たれている。効果的にfUTIを予防するには腸内細菌叢の是正することが必要ではないかと考えた。本研究は、プロバイオティクスを投与し腸内細菌叢を是正することで、より効果的なfUTIの予防法を確立することを目的とする。 平成30年度は、ST合剤によるCAPが乳幼児の腸内細菌叢におよぼす影響を明らかにするために、fUTIの乳幼児18例を対象とし、VURⅢ度以上を認めた11症例に対してはST合剤によるCAPを開始し(CAP群)、VURを認めなかった7症例にはCAPを行わず経過観察とした(非CAP群)。抗菌薬治療前、治療中、fUTI発症1-2、3-4、5-6か月後の5ポイントで便検体を採取し、腸内細菌叢をCAP群と非CAP群の間で検討した。 結果は、1.急性期の抗菌薬治療開始7日目には腸内細菌のほぼすべてがLactobacillales目となり、治療開始前と比較して腸内細菌叢の多様性は低下した。2.CAP群と非CAP群の両群ともfUTI発症1-2か月後には多様性の改善を認め、その多様性は維持され2群間で差はなかった(p=0.20)。3.構成菌目について、CAP群は有意にLactobacillales目が多く(p=0.005)、Enterobacteriales目が少なかった(p=0.003)。 以上から、ST合剤によるCAPは、fUTIの主要な起因菌である大腸菌やクレブシエラが属するEnterobacteriales目の増殖を選択的に抑制するため、乳幼児の腸内細菌叢を乱すリスクは低いと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、症例の登録も順調に進んでおり、便検体の回収も進んでいる。本研究で明らかにする項目は以下の通りである。 1.fUTI初期治療(抗菌薬投与)による腸内細菌叢への影響と治療後の腸内細菌叢の変化 2.ST合剤のCAPによる腸内細菌叢への影響 3.fUTI初期治療後のプロバイオティクス投与を使用した場合の腸内細菌叢の変化 4.高度VUR症例にプロバイオティクスを使用した場合のfUTIの予防効果 現在1、2の研究が進んでおり、結果が明らかとなってきている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で明らかにする項目は以下の通りである。 1.fUTI初期治療(抗菌薬投与)による腸内細菌叢への影響と治療後の腸内細菌叢の変化 2.ST合剤のCAPによる腸内細菌叢への影響 3.fUTI初期治療後のプロバイオティクス投与を使用した場合の腸内細菌叢の変化 4.高度VUR症例にプロバイオティクスを使用した場合のfUTIの予防効果 現在1、2の項目の研究は順調に進んでいるため、本年度は、3についての研究を進めていく予定である。現在症例登録も進んでおり、解析を進める予定である。
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