研究課題/領域番号 |
18K16750
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
木全 貴久 関西医科大学, 医学部, 講師 (90593517)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 尿路感染症 / 予防的抗菌薬持続投与 / 膀胱尿管逆流 / 腸内細菌叢 / プロバイオティクス / ST合剤 / 乳幼児 |
研究実績の概要 |
【目的】ST合剤によるCAPにプロバイオティクスを併用することで、乳幼児の有熱性尿路感染症(fUTI)の再発抑制効果が高まるか否か、そして腸内細菌叢にどのような影響を与えるのかを明らかにする。 【対象と方法】VUR gradeⅢ以上を有しST合剤(0.2g/day)によるCAPを開始した3歳未満の乳幼児23例(年齢中央値4.8か月、男女比14:9)を対象とした。18例はST合剤のみ内服し(CAP単独群)、5例はプロバイオティクスを併用した(併用群)。fUTI発症後3-6か月の時点で採取した便を用いて腸内細菌叢の分析を行った。すなわち16S rRNA遺伝子解析を行い、微生物生態系の多様性を示すShannon Index(SI)および構成菌目を2群間で比較した。なお両群とも検討期間中にfUTIを再発した患者はいなかった。 【結果】CAP単独群と併用群の間でSIに差は認めなかった(2.72 vs 2.97, p=0.50)。しかし併用群はCAP単独群と比較して有意にBacteroidales目が多く(19.9% vs 6.6%, p=0.02)、またEnterobacteriales目が少なかった(3.4% vs 14.4%, p=0.02)。 【考察と結語】 Bacteroidales目は腸管粘膜におけるIgA産生促進などの免疫修飾作用を有することが知られているが、今回併用したプロバイオティクスに含まれる糖化菌(Bacillus mesentericus)が産生するオリゴ糖によって増殖した可能性がある。またfUTIの主要起因菌である大腸菌やクレブシエラが属するEnterobacteriales目が相対的に抑制されていたことから、CAPとプロバイオティクスの併用は、粘膜免疫の増強と病原菌の増殖抑制を介してCAPの効果を高める可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ST合剤によるCAPにプロバイオティクスを併用することで、乳幼児の有熱性尿路感染症(fUTI)の再発抑制効果が高まるか否かを明らかにする目的で研究を進めている。現在、VUR gradeⅢ以上を有しST合剤(0.2g/day)によるCAPを開始した3歳未満の乳幼児をを対象とし、ST合剤のみ内服するCAP単独群と、ST合剤とプロバイオティクスを併用した(併用群)の2群間に分け、再発の有無を経過観察中である。本年度の結果では再発率に差はなかったが、観察期間が短期間である可能性が高い。次年度では観察期間が2年を超える症例も多くなるため、再発率の検討が可能となると思われる。 また、治療開始後半年間は、1か月ごと、それ以降は3か月ごと糞便を採取し、腸内細菌叢の解析も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
VUR gradeⅢ以上を有しST合剤(0.2g/day)によるCAPを開始した3歳未満の乳幼児をを対象とし、ST合剤のみ内服するCAP単独群と、ST合剤とプロバイオティクスを併用した(併用群)の2群間に分け、再発の有無を経過観察中である。 現在、両群間で再発率に差はないが、観察期間が短期間である可能性が高いため、観察期間を長期化し再検討を行う予定である。 治療開始後半年間は、1か月ごと、それ以降は3か月ごと糞便を採取し、腸内細菌叢の解析をすすめ、ST合剤による単独の腸内細菌叢の変化とプロバイオティクス併用時の腸内細菌叢の変化を比較検討する予定である。また、再発例と非再発例の腸内細菌叢の変化も比較する予定である。
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