研究実績の概要 |
【背景】ST合剤による持続的少量抗菌薬予防投与(CAP)は、膀胱尿管逆流(VUR)を有する乳幼児の有熱性尿路感染症(fUTI)の再発予防に有用である。近年、プロバイオティクスによる感染症抑制効果が報告されているが、その作用機序は明らかでない。 【目的】ST合剤によるCAPにプロバイオティクスを併用することで、fUTIの再発抑制効果が高まるか否か、そして腸内細菌叢にどのような影響を与えるのかを明らかにする。 【対象と方法】VUR gradeⅢ以上を有しST合剤(0.2g/day)によるCAPを開始した3歳未満の乳幼児23例(年齢中央値4.8か月、男女比14:9)を対象とした。18例はST合剤のみ内服し(CAP単独群)、5例はプロバイオティクスを併用した(併用群)。fUTI発症後3-6か月の時点で採取した便を用いて腸内細菌叢の分析を行った。すなわち16S rRNA遺伝子解析を行い、微生物生態系の多様性を示すShannon Index(SI)および構成菌目を2群間で比較した。 【結果】CAP単独群と併用群の間でSIに差は認めなかった(2.72 vs 2.97, p=0.50)。しかし併用群はCAP単独群と比較して有意にBacteroidales目が多く(19.9% vs 6.6%, p=0.02)、またEnterobacteriales目が少なかった(3.4% vs 14.4%, p=0.02)。 【考察と結語】 fUTIの主要起因菌である大腸菌やクレブシエラが属するEnterobacteriales目が相対的に抑制されていたことから、CAPとプロバイオティクスの併用は、粘膜免疫の増強と病原菌の増殖抑制を介してfUTIの予防効果を高める可能性がある。
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