研究実績の概要 |
術前に組織生検とFDG-PET/CT検査を行い、根治的手術を行った口腔扁平上皮癌56例の手術検体のホルマリン固定パラフィン包埋組織標本を用いて免疫染色を行い、最大切片における腫瘍細胞のPD-L1発現率、ならびに400倍強拡大視野におけるPD-L1陽性リンパ球数、CD68+細胞数、CD8+細胞数、Perforin-1+細胞数、CD4+細胞数、CD3+細胞数を算出した。 また、術前FDG-PET/CTの特徴量をLIFExを用いて解析し、原発腫瘍のSUVmax,metabolic tumor volume (MTV)、テキスチャ解析としてgray-level co-occurrence matrix(GLCM)によるhomogeneity, energy, contrast, correlation, entropy, dissimilarityを算出した。 PD-L1発現の有無ならびに免疫細胞浸潤の多い群・少ない群の二群間でPET特徴量を比較した結果、PD-L1陽性群は陰性群に比べ有意にMTV、GLCM-correlationが低く(P=0.009,P=0.001)、CD8+細胞が多い群は少ない群に比べ有意にMTV、GLCM-correlationが低かった(P=0.01,P=0.02) 。代謝腫瘍体積が少なく、糖代謝が不均一な腫瘍はPD-L1発現が高く、CD8+細胞浸潤量が多い結果であり、PET検査の特徴量で腫瘍内免疫マーカーの発現予測が可能であった。腫瘍内でのPD-L1発現は不均一であり、1回きりの小さな生検検体では腫瘍微小環境におけるPD-L1発現評価は困難とされているが、FDG-PET/CTを用いることにより、腫瘍全体におけるPD-L1をはじめとした免疫マーカーの発現診断が可能であり、生命予後予測や抗PD-1薬の新たなバイオマーカーになる可能性があると考えている。
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