本研究ではDaudi細胞(ヒトB細胞)におけるorosomucoid-like 3 (ORMDL3) 過剰発現の影響を調べることにより、アレルギー性鼻炎の発症に対するORMDL3の役割を検討した。 ORMDL3を過剰発現させたDaudi細胞においてB細胞受容体(BCR)を刺激し、ルシフェラーゼアッセイによりNFAT活性化を測定したが、ORMDL3過剰発現による影響は確認されなかった。BCRを介するシグナル伝達経路の解析のためExtracellular signal-regulated kinase(ERK)およびc-jun N-terminal kinase(JNK)の活性化をウエスタンブロットで評価したが、いずれもORMDL3過剰発現による影響は確認されなかった。 Thapsigargin(TG)によりORMDL3過剰発現細胞に小胞体ストレスを負荷し、Unfolded protein response (UPR) 経路における影響への解析を行った。PKR-like endoplasmic reticulum kinase (PERK) 経路、Inositol requiring 1 (IRE1)、Activating transcription factor 6(ATF6)経路について解析を行ったが、ORMDL3過剰発現による影響は確認されなかった。 TGによる刺激はUPRを活性化しアポトーシスを誘導するが、TG刺激後のORMDL3過剰発現細胞の生存率に変化はなかった。しかしオートファジーにおいてリソソーム分解機能を抑制するクロロキンはORMDL3過剰発現細胞のアポトーシスを促進し生存率を低下させた。 これらの結果は、ORMDL3は細胞外カルシウム流入を介するシグナル伝達への影響は与えないが、オートファジーを介するアポトーシスの制御に関与することを示唆していると考えられた。
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