2018 年度実施状況報告書

腎生検組織所見を用いた腎疾患コホート研究の確立

研究課題

研究課題/領域番号	18K17389
研究機関	大阪市立大学
研究代表者	柴田幹子大阪市立大学, 大学院医学研究科, 特任助教 (10802829)
研究期間 (年度)	2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード	腎生検 / IgA腎症 / 慢性腎臓病
研究実績の概要	慢性腎臓病は様々な原因疾患を包含しているため、その原因疾患によって予後が大きく異なる。そのため、腎生検により確定診断を行った腎炎の進行に寄与する危険因子の検討が必要である。本研究は、IgA腎症患者を対象とする既存のデータベースを有効活用し、最長約20年のコホートを整備し、IgA腎症患者の最長約20年の長期予後を検討する。また、1997年4月以降に大阪市立総合医療センターで腎生検を行った全腎生検症例を対象とするコホートを立ち上げる。 2018年度は、既存の1997年から2007年の間のIgA腎症患者340名の既存データベースについて、2008年度以降の追跡データの入力を行った。IgA腎症患者は約3ヶ月毎に外来通院しており、受診時には血圧測定、血液検査、尿検査を実施し、内服薬の処方を行われている。追跡データの入力項目としては、収縮期血圧、拡張期血圧、血液検査（腎機能）、尿検査（一般定性検査、尿沈渣、尿蛋白や尿中クレアチニンなどの定量検査）と、ステロイド、扁桃摘出術などの治療内容を入力した。また、降圧薬や脂質異常症治療薬、糖尿病治療薬などの投薬についても入力した。透析導入症例や腎移植症例についてはそれらを行った日付を入力した。2018年までのデータを単年度毎に入力し、クリーニングを行いそのデータを結合した。これにより最長22年の長期予後を検討する事が可能となった。大阪市立総合医療センターでは年間100件超えの腎生検を実施しており、1997年4月以降に腎生検を行った全腎生検症例を対象とするコホートを立ち上げるため、疾患毎の特徴を踏まえたベースラインデータを網羅的に収集できるよう、項目を検討している。大阪市立総合医療センターへ研究代表者が出向き、腎臓・高血圧内科メンバーとのミーティングを定期的に開催して検討を行っている。
現在までの達成度 (区分)	現在までの達成度 (区分) 2: おおむね順調に進展している理由 2018年度は、これまでに構築したIgA腎症患者を対象とする既存のデータベースを活用して長期予後を検討するため、追跡データの入力を行った。入力項目としては、2008年から2018年の間に外来にて測定された血圧、血液検査（腎機能）、尿検査（一般定性検査、尿沈渣、尿蛋白や尿中クレアチニンなどの定量検査）や、ステロイド、扁桃摘出術などの治療内容についても入力した。その上で単年度データのクリーニングを行い、縦断的な経過を追うためにデータ結合を行った。繰り返し測定されたデータがあるため、パネルデータ化も行った。 1997年4月以降に大阪市立総合医療センターで腎生検を行った全腎生検症例を対象とするコホートを立ち上げ、腎生検組織所見を含め疾患毎の特徴を踏まえたベースラインデータを網羅的に収集できるよう、項目を検討している。大阪市立総合医療センターにおいて定期的なミーティングを行い、これらの項目について検討するとともに、研究代表者が疫学勉強会を行っている。
今後の研究の推進方策	2019年度は、2008年以降に腎生検を行ったIgA腎症患者におけるベースライン及びフォローアップデータの入力を行い、より大規模なIgA腎症患者のデータベースを構築する。IgA腎症の治療法としての扁桃摘出術の有用性の検討を行い、また血圧や腎ドップラー超音波検査などと腎予後の関係を検討する。また、1997年4月以降に大阪市立総合医療センターで腎生検を行った全腎生検症例を対象とするコホートを立ち上げるため、ベースラインデータの入力を開始する。ベースラインデータの入力が終了すれば、全腎生検症例のコホートを用いて、横断的に尿所見異常の程度と腎ドップラー超音波検査結果、24時間血圧、腎生検組織所見等との関係について検討を行う。解析については多重ロジスティック回帰分析や重回帰分析などの多変量解析を行う。解析が終了した後、結果を検討し論文ならびに学会発表を通じて社会、国民に発信する予定である。
次年度使用額が生じた理由	（理由）当初予定していたよりもコンピュータを安値で購入したことと、モニターを購入しなかったこと、解析ソフトの購入が少なかったことに加え、2018度の学会発表回数、雑誌掲載数が少なかったため。（使用計画）本研究では、データの入力と解析作業が中心となるため、2019年度は、統計解析目的が中心となるコンピュータおよびモニター、統計ソフト、文献管理・論文作成支援ソフトを購入予定である。また、学会発表に関する旅費、学会掲載料等が必要である。