本研究の目的は、統合失調症をもつ人の在宅生活を支援するために看護師に求められる交渉コンピテンシーを教育するためのプログラムを開発することである。2022年度の目標は、開発したプログラムを評価することであった。 2021年度に引き続き、2022年度も複数の施設に協力を打診したが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、全4回の教育プログラムの実施に協力できる施設を得ることが難しかった。そのため、2021年度に1施設5名の看護師に行ったプログラムを、アンケートとグループインタビューにより評価した。 まず、アンケートより、自我機能に関連する内容やスキルにおいて、活用する自信が低いことが分かった。一方で、プログラムのスキルは活用されていると評価できた。 グループインタビューから、本プログラムの実施対象である統合失調症をもつ人以外に、本プログラムが活用されていたことが分かり、統合失調症以外の精神疾患をもつ人においても本プログラムの適応可能性があると評価した。また、研究協力者が実施した交渉の全体像は次のようであった。研究協力者は、患者を【全人的に深く理解したいと思うようになった】ことから、【多角的に理解して患者に沿った方略を慎重に考え(た)】、【丁寧かつ率直に聞くことで思いが語られ、進展した】り、【信頼関係を重視して患者の意向に沿った】りした。【見立てや関わりがうまくいかない】こともあったが、【全人的に深く理解したいと思うようになった】ことが基盤となり、交渉のサイクルが繰り返されていた。このことより、看護師が内発的に動機づけられ、全人的に深く理解したいと思うようになったことが本プログラムの中心的評価であると考えた。 今後は、1回で習得する、あるいは単独で習得することができるプログラムに改変すること、多様な精神疾患をもつ人にも適応できるプログラムを開発することが課題である。
|