和音に代表される,音の質感の知覚能力を,我々が生得的に有しているのか,あるいは経験や学習によって後天的に獲得するのかは,これまで様々な分野で議論されてきた.心理物理学や神経科学では,生後間もない乳児や,音楽に接する機会のない地域の住民,動物モデルを対象として,和音の協和性の知覚能力や選好性とその神経基盤における,生得的要素と後天的要素の分離が試みられてきた.本研究は,後天的要素の検討において,感覚系の臨界期,すなわち,生後に受容した聴覚刺激に応じて神経回路が劇的に発達する時期と,臨界期以降の可塑性との区別を,動物モデルにより初めて試みており,当該分野の知見を大きく広げたと言える.
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