国際人口移動が供給する労働力とホスト国の労働力との競合補完関係をマクロ・ミクロの両視点から明らかにしたことに本研究の意義がある。事例としたタイは,AECの進展により大メコン地域における中心的な役割を果たすと目され,過去数十年にわたってCLM諸国の労働者受容を巡る政策的な対応を進めてきたが,地域労働市場は十分に統合されているとはいえない。グローバル経済という巨視的な動きが,個々の地域経済や個々人というミクロな対象に課題を現出する構造を指摘する本研究の視点は,統計資料の分析に加えフィールドワークによって実証的に検討する必要性も示している。
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