研究課題/領域番号 |
18K18264
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
佐藤 麻理絵 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員 (80794544)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中東地域研究 / 難民研究 / NGO/NPO論 |
研究実績の概要 |
本研究は、「現代中東におけるイスラーム的NGOの域内ネットワークの解明:ヨルダンを中心に」と題して、難民問題の最前線に立ち続けている中東地域の難民支援をめぐる域内ネットワークとその構造を明らかにするものである。 本年は、ヨルダン及びトルコにてフィールドワークを実施した。フィールドでは一次資料の収集、また関連組織へ訪問して代表及び職員へのインタビューと参与観察を実施している。研究代表者が対象とするイスラーム的NGOの理念的側面については、インタビューと一次資料から分析を進めており、本作業においては、イスラームの思想や哲学についての文献、現代における人道や人権の概念に関する主に法学関連及び思想についての書籍を中心に参照した。トルコでは首都イスタンブールに加えて、シリア国境に近いガジアンテプへ赴き、子島進教授(東洋大学)と共にイスラーム的NGOへの聞き取りを行った。ガジアンテプの市街での聞き取りと合わせて、トルコのシリア難民受け入れの最新の状況を調査することが出来た。本調査では、特にシリア難民などの離散民が主体となって構成される離散型のNGOについて、示唆を得るものであった。 また、中間の報告として7月にセビーリャ(スペイン)で開催されたWOCMES(第5回世界中東学会)へ参加し、英語で報告を行った。本部会では、世界中から中東研究者が集い、活発な議論が展開された。また、6月にはBRISMES(英国中東学会)へ参加し、最新の研究発表を聞き、意見交換も行った。 昨年度のエジプトでの調査と今年度のトルコでの調査を踏まえて、イスラーム的NGOの地域的な広がりについて、マシュリク(東アラブ)地域を対象にシリア難民への対応に関する地域間比較に取り組んでいる。各国ごとにイスラーム的NGOに対する統制や市民社会全体の位置付けも異なっており、比較は容易でないという事実から着眼点を絞り検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イスラーム的NGOの湾岸諸国とのつながりについては調査方法や着眼点について未だ検討段階にあるが、ヨルダンとトルコさらには日本を含めてイスラーム的NGOのネットワークを考察することができたことは一つの大きな前進であると考えている。日本を扱うにあたっては、「ムスリムNGOのの越境性」「イスラームの紐帯とネットワーク」「日本のムスリムの世界的ネットワーク形成」といったテーマにつながる。ムスリムNGOの世界的なネットワークについては、市民社会のネットワークからもジャーナリズムからも的確な情報を得られない状況であるからこそ、本研究の果たすべき役割は大きい。日本を対象にするにあたっては、在日シリア人及びムスリムのシリア支援に着目し、調査を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
イスラーム的NGOの湾岸諸国とのつながりについて、ヨルダンを軸にさらなる調査を実施する。湾岸諸国の中でもある程度国を絞り、ヨルダンの一地区を選定して、そのつながりを詳細に見ていくことを検討している。また、シリア支援という一つの大きな枠組みを取り上げて、ネットワークを可視化することも検討している。また、日本との関係では非ムスリム圏とのネットワークの構築という意味で、新しいネットワークのあり方を言及できると予測している。
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