研究課題/領域番号 |
18K18267
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研究機関 | 大月短期大学 |
研究代表者 |
佐原 彩子 大月短期大学, 経済科, 准教授 (70708528)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 難民 / カリフォルニア / コミュニティ / 記憶 |
研究実績の概要 |
当該年度は、ベトナム難民に関してその受け入れ状況および歴史的背景についての理解を深めた。研究報告としては、下記の2回である。2018年9月23日アメリカ史学会シンポジウムにおいて移民・難民保護のポリティクスについて研究報告を行った。また、2019年2月22日中央大学人文科学研究所にてベトナム難民に関する強制送還の問題についての報告を行った。 史料調査は、2019年3月3日から13日まで、アメリカ合衆国カリフォルニア州カリフォルニア大学アーバイン校のSoutheast Asian Archivesにて行った。ベトナム難民に関する史料収集も進んでおり、新しい史料の閲覧が可能であった。とくに州政府関係者が寄贈した、初期のカリフォルニア州での難民定住に関する史料を入手することができたことは有益であった。それらの史料から1970年代から現在に至るカリフォルニア州オレンジ郡を中心とした難民流入に関して新しい知見を得た。連邦政府レベルではなくカリフォルニア州レベルでの福祉援助のあり方や、カリフォルニア州に流入してきた難民たち自身が州政府と協力しながら、さまざまな援助プログラムが実行されていったことが明らかになった。またSoutheast Asian Archivesが収集しているベトナム難民に対するインタビューについても調査分析を進めており、彼らの体験についての理解を深めている。また同校のグローバルスタディーズ科のLong Bui准教授とも面談し、ベトナム難民の体験およびその記憶について意見交換を行った。そして、カリフォルニア大学サンディエゴ校Yen Le Espiritu教授とも面談し、最近のCritical Refugee Studiesの動向についても知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カリフォルニア大学アーバイン校のSoutheast Asian Archivesが所蔵する、多くの新しい史料の存在によって、ローカルなレベルでの難民の定住過程が明らかになったため、調査はおおむね順調に進展していると考えている。難民の語りを検証する上で、これらの史料の分析および考察が非常に重要なため、今年度も継続してこれらの史料の分析および考察を行いたいと考えている。加えて、同Southeast Asian Archivesが収集しているベトナム難民に対するインタビューについても調査分析を行っているが、その過程において、彼らの体験の多様性をどのように理解するべきかについても検討している。
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今後の研究の推進方策 |
難民たち自身が再定住に関して福祉事業などと連携しながら、どのように活動を形作っていったのかについて、カリフォルニア大学アーバイン校のSoutheast Asian Archivesが集めているベトナム系アメリカ人に対するインタビューをさらに調査したいと考えている。今までの分析に加えて、これからさらなる分析を個人レベルでの移動を視野に入れて進めていく予定である。また、今回、オレンジ郡を中心とするベトナム難民コミュニティ内部の多様性(流入時期、流入時のプログラム、本国での経験、アメリカでの経験)についてもさらに理解を深めることができたため、記憶の形成について考察していく際にこの点についても十分に考慮していきたい。アーキビストの話によると400人分のインタビューが存在しているとのことなのでどのように内容を絞っていくのかについてその方針を決定していきたい。
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