本研究の最終年度に当たる本年度は、新型コロナウィルス感染症によるパンデミックを受け、当初計画していた国際シンポジウムの実施を見送ることとなった。しかしながら年間の研究活動を通して、学際的な国際研究チームのメンバーであるDr. habil. Clemens Alexander Wimmer(ベルリン工科大学付属ドイツ園芸学図書館長)、Angelika Schneider(元ヴァイマル古典財団庭園部門庭園保存専門官)とメールおよびWEB会議システムを通じて意見交換の機会を持ち、研究を進展させることができた。 具体的な研究成果として、業績欄に記載の通り、美学会機関誌『美学』投稿論文(2020年12月)、科研成果論文(日独二か国語版、2021年3月)、三田芸術学会機関誌『芸術学』投稿論文(2021年3月、校正中)を発表したほか、今後、慶應義塾大学アート・センター『Booklet』29号(2021年秋刊行予定)、日本科学協会編『科学と芸術』(2022年2月刊行予定)へ本研究の成果論文を掲載することが決まっており、現在その準備に取り組んでいる。 本研究は、近代芸術の制作論的水準における「動態性」問題を重視する立場から、伝統的な芸術研究の体系的枠組みを反省的に捉え、美術史学と生物学的関心を基盤とする諸学の接合によるクロス・ディシプリナリー学としての「庭園芸術学」の構築を目指した。三カ年にわたる本研究を通して、この構想が歴史学的にも芸術学的にも実証性をもって根拠づけられ得ることを確証し、研究の諸段階で発表した各論文において多角的に詳述してきた。しかし同時に、真の意味でのその「構築」にはさらなる探究の必要があるとの認識に至ってもいる。とくに「庭園芸術学」に特有の方法論的アスペクトにおいてはデジタル人文学との接合の必然性が検討されるべきであり、これを直近の研究課題としてゆく見通しである。
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