研究課題/領域番号 |
18K18903
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
宗本 晋作 立命館大学, 理工学部, 教授 (20581490)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 点群 / 仮想空間 / 記憶 / 印象評価 / 歴史文化都市 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、歴史文化都市の『歴史・文化面』のデータ化に適した新しいプラットフォームを考案することにある。プラットフォームには、データには3Dレーザースキャナにより空間の構造物や自然に対してレーザーを照射して得られる点群データを用いる。点群は3次元座標とその場所の色が正確かつ単純化せずに表現され、空間の物理的な要素がすべて実物のように精巧に描かれる。一方、一般にはポリゴンデータ(点群)から寸法の定義や編集を行い、線画により単純化したCADデータを作成しようとするリバースモデリングの技術は、多くの企業で追及されているが、これでは単純化、置換の過程で、『歴史・文化面』において大切な質的要素が失われる。 本研究では、データを単純化せず点群のまま扱い、都市の質的要素が損なわれない『歴史・文化面』のデータを構築することが特徴であり、それには点群データの質的要素が保存され活用できるかどうかが大切となる。そこで本年度は、要素技術の一つである点群データの質的要素を用いた分析手法の研究を行い、点群データの活用の可能性について確認した。 具体的には、街路景観の印象評価においてまとまり感が大切であることに着目し、京都市の街路を対象として、歩行者の注視傾向を取り入れながら色彩の物理量と人の印象評価の関係を点群を用いて分析し、騒色とされる色彩の範囲を明らかにした。街路における色彩のまとまりについて定量的に分析する方法を試行し、人の注視傾向に基づいて色彩のまとまりや騒色の範囲を明らかにして景観の規制誘導において寄与する知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の要素技術の一つである、点群の質的要素についての研究を行った。具体的には、3次元点群モデルを用いて含まれる質的要素を大量の情報を一括かつ定量的に分析する方法である。これを提案し試行した。街路景観の印象評価においてまとまり感が大切であることに着目し、京都市の街路を対象として、歩行者の注視傾向を取り入れながら色彩の物理量と人の印象評価の関係を点群を用いて分析し、騒色とされる色彩の範囲を明らかにした。まず、注視点計測装置を用いて、歩行者の視線を捉え、細街路では街路の両側の建物への注視は2階レベルに留まり、一方幅員20mを超える幹線通りは5階以上に注視点が集中する傾向があること、注視される範囲は人の安定注視野の範囲であることを明らかにした。次に印象評価においてまとまりがあるとされる街路において、彩度3.0以下かつ明度7.0以上の数値を有すること、またこの結果は既往研究と一致していることを明らかにした。最後に騒色の範囲としては彩度3.0以上かつ明度4.0以下であることを明らかにしたことに加え、景観にまとまりがあっても色彩が印象評価に影響を及ぼすことを考察した。 以上のように、要素技術に関連して、点群に含まれる質的要素の一つである色彩について、注視点計測装置を組み合わせて、印象評価と分析について一定の成果を挙げることができたと云える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、点群を「場所」として、点群の持つ質的要素について確認を行った。引き続き、点群の質的要素と印象評価の関係に関する研究を継続すると共に学会にて発表を行う。加えてもう一つの要素技術である「場所」に合わせて「住民の記憶」を記録する方法についても研究を進める。これには都市の『歴史・文化面』の質的要素となる「住民の記憶」の抽出には、模型を用いたヒアリング方法を導入する。一般に個々の「住民の記憶」をいかに抽出するかが問題となるが、模型を用いた独自のヒアリング方法により質的要素の抽出を試行し、「住民の記憶」から質的要素を得る方法を考案し、試行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
データベースの準備よりも解析手法の試行に重きをおいたため、購入備品を抑えた。 本年度は解析用のPC,データベース用のHDなどの購入により、予定通りの予算執行を計画している。
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