研究課題/領域番号 |
18K18903
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
宗本 晋作 立命館大学, 理工学部, 教授 (20581490)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 街並み / 注視点 / 印象評価 / 人口知能 / 避難シュミレーション / 木造密集市街地 / 避難経路 |
研究実績の概要 |
歴史文化都市の評価として、2020年度に発表を行った、都市の訪問意欲と景観の関係を学習させた「Deep Learning を用いた街並み画像に対する平均訪問意欲推定 AI の作成と検証」を査読論文に纏めた。「マルチモーダル深層学習を用いた街並み画像に対する人間の振る舞い予測」として日本建築学会計画系論文集 2022年8月 第87巻 第798号に掲載予定である。 2020年度より継続して取り組んできた、安全確保のために道路拡幅などにより形質が変更され、歴史文化都市の記憶や文化が失われ質が保持されない問題に対する方法として、GISと避難シミュレーションを取り入れ、木造密集市街地の都市構造を変えず、避難経路を発見することで安全を確保する方法を査読論文に纏めた。「木造密集市街地における避難シミュレーションを用いた路地の安全性評価法に関する研究」として歴史都市防災論文集vol.15に掲載された。 本研究の目的は、歴史文化都市の『歴史・文化面』のデータ化に適した新しいプラットフォームを考案することにある。プラットフォームには、3Dレーザースキャナにより空間の構造物や自然に対してレーザーを照射して得られる点群データのみを用いることを予定していたが、2021年度もコロナ渦であったので、点群データに加えて、画像やGISなどの他のデータでも『歴史・文化面』の保持に有用であることを示すことに方針を変え、成果を挙げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究は予定通りに、下記の2つの論文を纏めた。「マルチモーダル深層学習を用いた街並み画像に対する人間の振る舞い予測」として日本建築学会計画系論文集に投稿し、注視点、印象、振る舞い予測の関係を分析する方法を纏めた。 都市の質的な部分を保持していくために、都市構造を変えない、安全を確保し、評価するための技術として、「木造密集市街地における避難シミュレーションを用いた路地の安全性評価法に関する研究」を纏めた。 これまで、点群等、また上記の研究のように「場所」に関する研究は、コロナ渦で現地に行けないこともあり、様々な技術を取り入れ、予定以上に進んだ。 一方、もう一つの要素技術である「住民の記憶や知識」を記録する方法についての研究は、コロナ渦で現地に行けず、進められていない。今年度、コロナ渦も明けたので、「住民の記憶」の抽出、そのためのヒアリングから実施する。一般に個々の「住民の記憶」をいかに抽出し、記録するかが問題となるので、「住民の記憶」から質的要素を得る方法などを考案し、試行する予定である。上記のように、研究目的の達成において、一部コロナ渦のためにやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
まずこれまでコロナ渦で遅れていたもう一つの要素技術である「住民の記憶や知識」を記録する方法について試行する。現地に行き、ヒアリングを実施、「住民の記憶」の抽出と記録を試みる。個々の「住民の記憶」をいかに抽出し、記録するかについて、「住民の記憶」から質的要素を得る方法などを考案し、試行する。 また「注視点計測装置とスケッチを用いた街路空間の特徴把握に関する研究」もまた、従来からの注視点計測装置を用いた手法では、被験者が空間の特徴として実際に把握したどうかを定めることができない問題を改善し、スケッチを組み合わせた新しい手法により都市の質的な部分を説明しようとする試みであり、大切な技術であると考え、査読論文として纏める。 これらを組み合わせて、研究全体としての最後の纏めとして、都市の文化や質に人の記憶の面を加え、これまで取り組んできた数理面の評価についての内容と組み合わせ、都市を数理的な面と、記憶や文化面からの両方からの評価を行うためのプラットフォームとして纏める。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)物品費については、実験データ用サーバーを整備する人手が間に合わず、高額機材の購入を行わなかったため。 人件費・謝金については、コロナ渦で、申請者と協力者の現地訪問、ヒアリング等が実施できていないため。 (使用計画)物品費については、データ保存用サーバーを整備する。旅費は研究発表と協力者との打合せのための交通費や実地調査に充てる。人件費・謝金については、データ分析を行うための人件費に充てる。その他については、投稿論文の入稿料に充てる。
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